Genichiro

パンチドランク・ラブのGenichiroのレビュー・感想・評価

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)
5.0
久々の鑑賞ですっかり忘れてました、ファーストカット凄すぎてびっくりしたわ。劇場で見ると静かな音と大音量のコントラストがすごくて何回もびっくりさせられた。2002年にアダム・サンドラーを起用するという嗅覚が見事すぎるね。『ファイトクラブ』のあと、00年代の憂鬱を的確に描写した作品が今作だったのではないか。そのためのアダム・サンドラー、うーんすごい。主人公を取り巻く問題は姉妹たちに去勢されていることが原因ではなく、彼の抑圧それ自体がマスキュリニティに起因している。突然ガラスを割ったりトイレを破壊するような不意な暴力の爆発(両シーンとも凄すぎ!!)は自らの男性性を侵害されているという(他者に代弁された)彼の心情が現れている。偶発的でしかなく、相互に一方通行的であった1度目のキスと対照的に、2度目のキスでは自らの言葉で全てを打ち明け、お互いの視点の切り返しによって描写される。そしてその行為が大量のプリンに意味を持たせる。弱者男性が女性に承認されて救われる的な話に落ちる危うさもあるが、今作は絶妙なバランスでそういう危うさを回避していると思う。PTAの美学のために奉仕される95分というランタイム。キャリアの中でも随一のパキった色彩感覚が全開となっていて素晴らしい。ほんとのほんとに大傑作。
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