じゅぺ

パンチドランク・ラブのじゅぺのネタバレレビュー・内容・結末

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ポールトーマスアンダーソン監督の描くラブストーリー。彼の作品はこれまで「マグノリア」「ゼアウィルビーブラッド」「インヒアレントヴァイス」を観ましたが、どれもめちゃくちゃ強烈。もう一度あの体験を、と言うことで鑑賞。

主人公は一見優しそうでいて、内に暴力的なものを秘めています。なにかあると、突然プッツン切れて収集がつかなくなる。あんな姉たちがいたらモヤモヤイライラ蓄積していくのもわかる気がしますw 誠実なんだけど、何をするにもドン臭い。彼のもつ鬱屈した雰囲気、現実に対する不満を抱えたところは、ストレス社会に生きる現代人だれにも当てはまるんじゃないかな。自分にも彼と共通したところを見つけられるからこそ、ちょっとウザいところがあるバリーを憎みきれないと思うんです。チョコレートプリンを買い集めてマイレージを貯め始める衝動も、じつは彼の「この現実から飛び出したい」なんて願望があるのかも。

そんな彼のところへやってくるリナ。パンチドランクラブ(=強烈な一目惚れ)によってふたりは惹かれあっていく。なんで?って誰もが感じると思うんですが、一目惚れだから、とくに理由はないんでしょうw そこを深く追求しない姿勢も好きです。

この出会いを予言するかのようなオープニングのカークラッシュ、突然目の前に放置される楽器(名前忘れた)のシークエンス。夢か現か。終始幻想的な演出で、ふしぎな感覚です。ここでハマらないと最後までみるのは厳しいかもしれない。自分にはこの"気持ち悪さ"が心地よく感じられました。このさじ加減を徹底した計算から生みだすんだから、PTA監督はすごいです。

バリーの欠点であり、これまで諸々のことがうまくいかなかった原因でもあった癇癪癖、暴力性。それがリナとの出会いを経て、彼女を守りたいという思いによって、彼の力は幸せをつかむためのプラスのエネルギーとして放出されます。周りから見れば対したことはないかもしれない。それでも、彼にとっては大きな成長だったのです。

観終わって身体にじんわりと幸せな気分が満たされる気がしました。どこかアバンギャルドな雰囲気漂うロマンティックコメディ。これまでにない新しい体験をできました。
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