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脱出のmasatのネタバレレビュー・内容・結末

脱出(1972年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

1972年度のアカデミー賞に、
『ゴッドファーザー』と共に作品賞へとノミネートされ、
コッポラと共に監督賞へとノミネートされたツワモノ・・・
とは聞いていたが、あのコルレオーネ・ファミリーと何が互角だったのか?
なのに、撮影監督ヴィルモス・ジグモンドがノミネートされていない!?(因みにゴードン“ゴッドファーザー”ウィリスもノミネートなし!)

大いに不思議な映画だ。
都会の金持ち4名が上部だけの自然回帰を掲げ、川下りの為に山奥へ。そこでとんだサバイバルを経て、全員が何かを無くすと言うお話。
一人は足を無くし、一人は命を無くし、さらに、“処女”を無くしたデブに、大自然の悪夢、その呪いから永遠に解き放たれない、即ち人生を無くし・・・

で、一体!?何?
メッセージが真に迫らず。
さらに、アメリカン・ニューシネマという位置付けだとすると、本作は1972年の作品、即ち、71年にニューシネマ第1期が死滅し、成熟しようとしてより拡がりを持たせようとするこの第二期のトップバッターの一人という訳だ。
確かにニューシネマの変化球かもしれない。何故なら、どこまでも続く長い“道”は目の前になく、大自然の“川”が激しくも静謐に流れ、そこをどこまでも下っていく男たちの話だからだ。道を川に変えた。そこにはいくつもの落とし穴と破滅が待っている・・・都会以上に危険なのである、と言いたいのか?

確かに冒頭は興奮する。
川下りを準備する男たちが訪れた山の中腹にある家々。後に処女を失うデブが「こういう山奥では近親者の相姦が普通だ」と言った。目の前に現れる少年、家の中に居る子供か大人か解らない人とその母か祖母か、いや女かも解らない人・・・異様な暗雲が鼻を突く感じは、気味が悪い。
ヴィルモスのカメラワークは、言うまでもない。

さて、監督ジョン・ブアマンとは何者か?
この後、奇怪なエロSF『未来惑星ザルドス』(74)や天晴れな挑戦傑作『エクソシスト2』(77)など、異様な映画が続き、どれも映像美と官能美は迸ってはいる。
本作でも、画と官能は見せてはいる。
が、狙いが謎。だけど魅力がなくはない。寧ろ、印象深い。
よって、映画史上、謎な監督の一人として、君臨しているのである・・・と思う。
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