S

脱出のSのレビュー・感想・評価

脱出(1972年製作の映画)
3.7
『ザルドス』のジョン・ブアマン監督が命がけの脱出を描く、サスペンス・アドベンチャーの傑作。

ダム建設によって消えてしまう前にカヌーで渓流下りをしようと、アパラチア山脈の奥深い渓谷へやって来た都会の4人の男たち。だが、そこはまったく予期せぬ地獄だった。
地元民との些細なトラブルが、彼らのレジャーを“死のゲーム”へと変えてしまった…。彼らは脱出できるのか?

◼️
自分の男らしさを試すためにすすんで危険に挑んだ4人の男たちが、その危険がもたらした予想外の事態に狼狽し、逆に人間の弱さや卑屈さを醜く露呈していく姿を描く。

『わらの犬』や『鮮血の美学』と同様に、本作品でも自己満足的な中産階級が文明から離れた荒野で不条理な性的暴力に直面し、自らに殺人者の本能があることに気づく。

4人の男たちは、寡黙なエド(ジョン・ヴォイト)、生存主義者のルイス(バート・レイノルズ)、お人よしのボビー、繊細なドリュー。
地元の山男2人組に待ち伏せ攻撃され、1人が裸にされ強姦されるシーンは、子どもにトラウマを植え付けるだろう。
男っぽい定番の冒険映画ではなく、より危険なアプローチを呈し、登場人物のヒロイズムが本当は何を意味するのかを常に問いかける。
渓流下りのアクション映画としても凄い迫力で、撮影とカメラワークも素晴らしい。役者も撮影監督も危険だっただろう。ヘルツォーク『アギーレ』も見るからに危険な撮影だった。

70年代に淀川長治解説の日曜洋画劇場で放送され、お茶の間の家族団らんをパニックに陥れ、1960年代生まれの子どもたちに生涯消えないトラウマを与えたたという。
また、ラストで新しい湖から手が現れる夢でエドの睡眠が妨げられる恐怖の場面はひねりが効いており、『キャリー』(1976)などで真似された。
S

S