眠れないよ

憂鬱な楽園の眠れないよのレビュー・感想・評価

憂鬱な楽園(1996年製作の映画)
3.5
35mmフィルムで撮られる光はこんなにも美しいのか、、、と陽光やネオンに心を奪われていた。それから音楽がサイケデリックでよかった。どう考えても映像とは不釣り合いな感情をもたらす音楽の差し込み方だけれど、むしろその不釣り合いをこそ楽しむ映画だった。
ピィエンの復讐は誰が見ても上手くいくはずがない。それを分かった上で、弟分の気持ちを晴らしてやるためだけに愚行に付き合おうとするガオの兄貴分としての義理人情は、音楽と映像のちぐはぐな釣り合わなさによく似ている。そういう矛盾こそを大事にしたいと思う。人の気持ちを軽くするために、自分はどこまで愚かな行為に付き合えるだろうか。正しさだけで人と付き合いたくない、間違った方向に進む人がいたなら、間違えたねと互いに笑えるところまで連れ添いたい。二人で走らせた車が道を踏み外して止まった草むらの中で、大笑いできたらそれで良い。

物語よりも音楽と光の美しさを撮りたかったんだろうなと思う。侯孝賢、自由すぎるな〜。


同じ茶碗と箸を使っているのに、どうしてアジアの方々の食べ方はあんなに魅力的なんだろう。茶碗の上におかずをいくつも乗せて、立ちながら、しゃがみながら、犬に食べさせながら。日本文化で生きてきた自分たちにとって行儀が悪く見えるあの食べ方にあこがれるのは、文化に潜む規律から逃れたいからかもしれないな。
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