りょう

ロング・エンゲージメントのりょうのレビュー・感想・評価

ロング・エンゲージメント(2004年製作の映画)
3.8
 ジャン=ピエール・ジュネ監督で最初に観た作品は、個人的には好きでしたが、「エイリアン4」が不評でした。世界的に大絶賛された2001年の「アメリ」で名誉挽回したので、連続してオドレイ・トトゥを主演にしたこの作品も期待されていた記憶があります。当時は地元のシネコンで観ましたが、平日深夜のためか、人生初の“貸切り”上映でした。結果として興行的には成功しなかったはずです。
 あらためて観てみると、第一次大戦中のヨーロッパの雰囲気を強調するセピアの色彩で、さまざまなアイテムを駆使した監督の個性的な描写が印象的です。ほぼ典型的な彼の作風なので、そこが体質的にダメなひとは少なくないと思います。
 物語の中心は、マチルドが婚約者であるマネクの生存を信じて捜索するラブストーリーですが、その過程で、戦地に居合わせた兵士の顛末などのエピソードもサイドストーリー的に丁寧に描かれています。そこにジョディ・フォスターなどの有名な女優さんが登場してくるので、とても贅沢な演出です。
 ところどころVFXも多用されていますが、戦場やパリの街並みなどのスケール感の演出にはかなりこだわっているし、さまざまな登場人物のほんの数秒の回想などにもそれぞれ映像を添えているので、多額の予算を必要としているはずです。全編にわたって飽きさせない展開ですが、かなり情報過多な印象もあるので、この物語の演出として最適かどうかは賛否あるかもしれません。
 戦争を舞台にした物語なので、登場人物の死を描く場面も少なくありませんが、ソフトなコメディタッチで、気分が重たくなるような雰囲気はありません。このラストシーンなら大袈裟で感動的な演出になりがちなところ、とても穏やかな2人の表情と佇まいが印象的でした。ギャスパー・ウリエルの早過ぎる死が惜しまれます。
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