「ディストピア人間爆発モノ」と個人的に呼んでいるジャンルが好きで、代表的な作品として『時計仕掛けのオレンジ』(近未来を舞台に快楽を求めて暴力に走る若者たちの話)なんかがあると思っている。
ディストピア、というと近未来を想像するんだけど、考えてみれば現代の世界って少し昔の人からしたら十分ディストピアたり得るのでは?というわけで、現代アメリカでケビン・スペイシー演じる中年のおっさんが爆発してしまう映画『アメリカン・ビューティー』。
『時計仕掛けのオレンジ』では若者たちは暴力の方向に爆発していたんだけど、『アメリカン・ビューティー』の中年男は性の方向に爆発するのよね。映画開始から終盤まで主人公の行動原理はほぼ「娘の友達とヤリたい…‼️」しかない。
「なんじゃそのキモい話は」、と思うかもしれないのだけど、例えば空気階段がキングオブコントで優勝した時のネタなんかは「警察と消防のトップがSMクラブで鉢合わせる」って話だったりする。そう考えると、コメディはキモい出来事と程よい距離をとった時に生まれるものだとも考えられる。
中年のケビン・スペイシーが娘の友達のJKとセックスしようとする話はキモいんだけど、ナレーションつきで見れば完全にブラックコメディなのよね。
で、そんなすっげ〜くだらないブラックコメディを明暗がクッキリした渋すぎる画を多用し、アートめいた映像を連発しながら撮ってるのがこの『アメリカン・ビューティー』なわけです。映像と話の温度差で風邪ひくよ!!!
脚本もご都合主義的な展開はほぼなく、起こるべくして起こることしか起こらず、リアリティが感じられます。最近ではもはや音楽代わりに聴いてます。おすすめです。