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ラストゲームのとぽとぽのレビュー・感想・評価

ラストゲーム(1998年製作の映画)
3.5
"これは人生最大の決断だ"

刑期短縮の条件は、高校バスケのスター選手で期待のホープな息子を知事の母校である大学に行かせること、残された時間=説得する猶予は1週間。力作伝記映画『マルコムX』以来となるスパイク・リー監督 × デンゼル・ワシントン主演コンビ作品となった本作で、名優デンゼルは見事に家庭もゲームも支配している。あの年頃であんなハードな練習というより特訓させられたらトラウマ、絶対そりゃオヤジのこと目の敵にして嫌いになるよと。そう教わった、もうあんたから教わることはない。この難題に神は応えてくれるのか?
耳にタコ。将来有望な人気者に集る人々の群れ。だれもかれもが口を開けば"進路はどうする?大学は決めたか?"と聞いてくる。知ってるさ。愛してると親しい顔して近づいては金を巻き上げるヒル共。なにも見返り貰えなさそう、旨味なさそうだと分かった途端、語調を強め逆ギレで食いかかってくるものだからスゴい!顔を映さず口元だけ撮ったり、地に足ついた匿名性の恐ろしさ。引く手数多誘い=誘惑の多さと忙しない雑音に目が回りそう。取り合い合戦の目玉として喧騒の真っ只中。厳しい生い立ちに甘い誘惑、あの手この手で自分たちの方へとなびかせようと必死。アレがいいコレがいいと口を挟みたがる、モノまで寄こそうとする。どこを見ても美味しい話ゴロゴロ山盛り、固い決意も揺らいでしまいそうなほど…。チラつく大金に惑わされてもおかしくない。誰も信用できない。それでも亡き母の教えに従い正しい道を進もうとする息子ジーザス。果たしてプロジェクト低所得団地から抜け出せるのか?
そんな雑音の中で父息子、二人の再会も導入部キッカケはそうした雑念に他ならないかもしれないが、理屈抜きで向き合っていくことになる。わだかまりや確執と対峙して、やがてそれらを捨て去るように囚われず生きていくことこそ神の御心か。塀の中でも魂は自由にあの大空を舞っていく。不遇な状況下に置かれた人々への眼差しなど、信仰やキリスト教色の強い作品で単純な内容以上に奥行きを感じて難しかった。

神よ、ジーザスを我らに遣わせてください
もう俺のことは忘れて妹と生きていけ。憎しみは捨てろ。じゃないと俺みたいに最後は哀れになる
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