アラン・パーカー監督は、監督処女作である『ダウンタウン物語』(1976)でも見せたように、音楽への造詣が深く、そしてとてもセンスのある監督です。
さかのぼれば、脚本で参加した『小さな恋のメロディ』(1971)でのビージーズの楽曲の使い方なども、多少はアラン・パーカーの意見もあったのではないかと思われます。
そして青春映画の傑作『フェーム』(1980)でもその音楽的センスを存分に発揮して、音楽のヒットチャートもにぎわすほどの作品となりました。
そんなパーカー監督が、この作品ではソウルミュージックへの愛を描きました。
ジミーという青年が労働者階級の人間が多く集まるアイルランドのダブリンのある街でメンバーを集めソウルバンドを結成しようとする。
新聞に出した募集広告が功を奏し、徐々にメンバーもそろうようになり、
次第にバンドは人気となっていくのだが、メンバー間の軋轢は絶えることなく・・・
『フェーム』でもそうだったのですが、まず、オーディションの場面がテンポがあってとてもいいです。
短いカットの繰り返しで、街の雰囲気、住民の特徴、メンバーたちの個性をあぶりだす。
そのオーディション場面で、いろんなアーティストの名前が飛び出してきて、それぞれ好きだの嫌いだの意見を言うジミーですが、それはそのままパーカー監督の好みなんじゃないかと思ったりします。
コミットメンツと名付けられたメンバーたちが、ほとんど役者ではなくミュージシャンが演じているのだから、その演奏シーンに迫力が出るのは当然。ちょっと意地悪なエンディングもいいですね。
『フルモンティ』(1997)みたいにスカッとした展開になると思って観てたらいい感じの肩透かしを喰らいます。
これはこれでハッピーエンドなのかな。
演奏されるソウルミュージックはとてもいい。
ボーカルもリズム隊もコーラスガールもみんないい。
演奏場面だけでも入場料を払う価値がある。
だけどだれもヒーロー然とした人物が出てこない。
それでもドラマティックな物語を作り上げるのだから、アラン・パーカー監督流石。
いかにもアイルランドとイギリスの合作らしい雰囲気と空気感。
そぼ降る雨と濡れた舗道で繰り広げられる青春群像。
素敵な作品です。