ピンヒールすぐ痛くなる

告発の行方のピンヒールすぐ痛くなるのレビュー・感想・評価

告発の行方(1988年製作の映画)
4.0
ちょっとヘビーな話をすると、私はいわゆるところの性暴力サバイバーで、本作を初めて観た時は被害前の10代後半だった気がする。
先日、被害に遭ってから初めて再鑑賞した。

不思議に思う人はいると思う。
「どうして自分の傷に自分で塩塗るようなことするの?」って。
確かにそう。
ある意味、性被害がテーマになっていたり性被害シーンが含まれている作品を観ることは私にとって自傷行為と等しい。
でも、ここ最近は例えフィクションだろうと性被害に遭った女性が"死にたいくらいの苦しみを抱えながらも立ち上がる姿"を見て、勝手に勇気を貰っているというか、根性焼きしてる。

被害前に鑑賞した時は、暴行シーンになる手前で早送りした。直視できなかった。
ジョディ・フォスターの役名もろくに覚えようともしなかったし、被害に遭ってから公判に辿り着くまでの行方をちゃんと理解できなかった。
『告発の行方』を観ているんだけど"告発の行方"を追いかけられていない迷子状態。
ケリー・マクギリス演じる検事補を弁護士と認識していたくらいだし、司法に然り司法取引に然り、何やら小難しい事になってるな程度にしか捉える事ができなかった。

だから、先日再鑑賞して先ず思った事。
率直に「ごめんなさい」。
これは実際、性暴力被害に遭った方に対し改めて思った事だが「自分がレイプ(性暴力被害)に遭うまでレイプされた人の気持ちが分からなかった。やっぱり対岸の火事に思えていた部分があった。まさか自分に降りかかると思わなかった。本当にこれまで性被害に遭ってしまった方達に分かったような言葉並べてごめんなさい。」って。

本当に本当にこればかりは、というか性被害に限らず犯罪被害、いじめ、ハラスメント、経済的困窮等ありとあらゆる社会問題は"被った"当事者になってみないと分からない事だらけ。
血縁関係にある家族でも、長年付き合いがある友人、知人、パートナー、行政、警察、弁護士、医療従事者、みんな完璧に抜かりなく被害者の気持ちを知ったり、理解したりする事は残念ながら不可能なんだよね。
でも、だからって理解を求め主張したり気持ちを吐露する権利は被害者みんなにあって、サラのように告発する事を選ぶ女性を咎めたり、この作中で描かれていたように、「もう忘れろよ いい加減うんざりしてきたぜ」と言い放つ糞彼氏や、もう哀しくてやるせないけど、

「これはレイプ事件ではない 被害者が挑発した和姦行為だ」

「服装は?」「何の関係が?」「挑発的な服装を?胸が開いてた?」「破られて 関係ある?」「服装がその気にさせたのかも…挑発を?」

「法廷で聞かれるわ "男に殴られる事を好むか"って質問も」

「弁護側はあなたが"ふしだらな女"だと主張する」

「酔ってて男を挑発 麻薬所持の前歴」

こんな言葉は全てセカンドレイプに該当するわけさ。
絶対被害者に言ってはならない言葉なんだよね。そういう認識がない人、未だに多いと思う。減らないのは、それがやっちゃいけない事って教える人があまりにも少ないから。

あくまでも持論というか、私個人が思った事に過ぎないんだけど、この検事補ジェニファーには胸糞悪いままで終わったな。
最終的にこれ勝訴したけど、あくまでも勝訴したのは"強姦事件"としてではなく、"過失傷害"じゃんって。
いやジェニファー、てめえが最初から被害者サラの意見を聞かず加害者の弁護士どもと落とし所をつけたからこうなったんじゃねえかと。
最後は、皆んな「ばんざ〜い🙌」ってオチでちゃんちゃんと終わったけど、個人的には当時の時代背景もあったと思うが私はジェニファーに対する苛立ちが何も消火されぬまま"なんなんこれ。ムカつく映画だな"で終わった。
サラの悔しさや無念は本当に晴れたのか、晴れてないだろうって、そういったエトセトラを考えていたら眠れなくなった。

まあ、本作が公開されたのは1988年。
先進国のアメリカが実際にこんな社会だったら、2023年の今この時も性犯罪に本腰入れて向き合わない日本の1988年って想像しただけでも生き辛いとしか思えず、おっかない(一番きもいのは、ジョディ・フォスターの裸体を拝みたいが為に鑑賞していたというクズ👹)。

被害に遭っても被害者の数だけ被害ケースは異なり、報い、救われ方も違い、寄り添われ方、立ち向かい方も違う。
だから、本作でいうジョディ・フォスター演じるサラは世界に何億人といる性暴力サバイバーの内の1人であって、サラ=性被害者ってみんなこんな風なんだという目では見てほしくないと正直思った。

この手の作品と今散々向き合っているけど、非常にスコアがつけ難い。
サバイバーという立場では闘う勇気を貰ったので4.0にしよう。
性加害者に中指たてて締めます。
それと、私がサバイバーだと分かっても被害に遭う前と変わらずにハートで寄り添ってくれる最高な女友達にありがとう。

余談
ジョディ・フォスターはレイプシーンに耐えられず「こんなまねはできない。あなた方の映画を台なしにして、ほんとうにごめんなさい」と言って、役を降りようとしたこともあったらしい。

また、当初サラ役をケリー・マクギリスが演じることになっていたらしいが、ケリー自身が性暴力被害者だった為、この配役は変更になったらしい。

▷私的なツッコミと腑に落ちない点

・正直この時代で、アメリカは日本の数百倍も進んでた。病院に行きレイプ相談センターの人が病院に駆けつけてくれる仕組みが成り立っていたのは羨ましいとさえ思う。付き添いが居る居ないで全く違う

・海外では警察より検察が先に出てくるのはなぜ?

・サラの彼氏がくされ

・心許ない時に限ってした家族への電話は期待と真逆な言われたりされたりするんだよね 特に母な

・フォスターの"猛虎"と書かれたトップス?カーデ?が気になった

・「レイプだと思うけど勝てない」って言う検事ジェニファーが絶妙にイラこら

・ジェニファーてめえ🔥裏で検事と被疑者弁護人がこんな裁定取引したらもう人生何も信じられなくなるわ

・レコード店のくだりは吐きそうだった。あれは死ぬ程怖い。あの話しかけにきやがったクズはパイプカット案件

・サラが自ら命を落とす覚悟をした姿を見て改心するジェニファー。なんなん。検事局に命令されたから取引したんよって言えちゃうのか。私が間違ってたわ…か。

・サラはどうやって生活を繋いでいたんだ?仕事は?

・隠してた事じゃないんだよね。被害に遭ったショックが被害前の記憶を曖昧にさせてるんだよ。ジェニファー怒んなよ。

・被告側の弁護士にただっただ腹が立つ 陪審員達に向かって気持ちよく熱弁してんじゃねーぞ

・強姦の教唆犯達は有罪でぶちこめたが、強姦した奴らは強姦罪としてではなく過失傷害の容疑で2年半から5年の懲役刑っていう。これ相手側の弁護士との裁定の取引を被害者無視で進めたジェニファーの汚点、私は許せないんだよな。

▷残った台詞✒️

「店へ行ってまだ犯人がいるかどうか確認を」被害直後にこれは地獄

「これはレイプ事件ではない 被害者が挑発した和姦行為だ」しね

「服装は?」「何の関係が?」「挑発的な服装を?胸が開いてた?」「破られて 関係ある?」「服装がその気にさせたのかも…挑発を?」

「法廷で聞かれるわ "男に殴られる事を好むか"って質問も」

「弁護側はあなたが"ふしだらな女"だと主張する」

「酔ってて男を挑発 麻薬所持の前歴」「無関係だ」「事件に無関係でも陪審員の心証を悪くするわ」

「自分の得のためにあたしを売ったわけね」

「あたしの話は誰にも聞いてもらえない あんたがそうしたのよ 分からない 味方だと思ったのに そう思ってたのに…なのになぜ?」

「敗訴確実の事件なんか捨てるんだ」

「見込みは?」「五分五分よ」実際その場にいた人の証言があっても見込み五分五分ってなんなんだろうな

「"強姦"容疑が"過失傷害"に引き下げられた原因は被害者である若い女性が証人として弱いためと弁護側は示唆しています」

「アメリカでレイプ事件は6分に1件発生 4件に1件は複数犯による犯行である」公開当時の数字。今は?