まりりんクイン

スーパー!のまりりんクインのレビュー・感想・評価

スーパー!(2010年製作の映画)
5.0
折に触れ何度も見返してしまう作品。

「ヒーロー」をモチーフにしていますがこれは「ヒーロー映画」ではなく「ヒーローについての映画」です。

「キックアスの皮を被ったタクシードライバー」という評をみたことがあるけど、とても的を得ていると思います。
ヒーロー論、引いては道徳論や宗教論が展開されていくにも関わらず決して小難しくならず、
「誰がみても考えさせられる」、それでいて
「誰がみても楽しい」
素晴らしいバランスです。

この映画は暴力を否定してはいますが、それを行使してしまうフランクの心境は肯定しています。
フランクが途中で見る「宗教的ビジョン」も、とてもまともな精神状態の人とは思えません。
しかし、フランクはサラというやっと手に入れた「愛される実感」を取り戻したいだけなのです。
これらが、
「どれだけ周りから見ればおかしいことでも、例え常軌を逸したことでも、その人にとってはとても大切な事かもしれない。それを周りが否定する権利なんてあるのか?」
という問いかけを見る物に与えます。
そして、
「それでもきっと良いこともあるはずだ・・・あるはずだ!」
という作り手のメッセージが反映されたであろう着地が、全体としては救いのない物語に不思議な暖かさを与えており、見る側の涙腺をぶっ壊しにかかります。
(同様のメッセージと作り手の思想がみられるという点で、自分は宗教版「風立ちぬ」くらいに思ってます)

一見すればB級アメコミヒーロー映画タッチですが、描かれている本質はまさにそのマンガの「コマとコマの間」のような、そういうマンガなら普通絶対に描かない人間のカッコ悪さ、滑稽さ、エゴなどです。
そしてそれらを抱えながらも「素敵な瞬間」を得ることで人間はなんとか生きていく。それで良いじゃないか。

一度観るともうopのアニメーションの段階で涙腺をしばき倒しにかかってくるので困ったものです。


あと、
エレンペイジ史上最高のエレンペイジは、ジュノでもハードキャンディーでもなくスーパー!のエレンペイジです。(断言)
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