このレビューはネタバレを含みます
冒頭で、ランニングしながらカフェに寄り、甘いコーヒーに粉薬を溶かして飲んでいるところで、「もしかしたら観たことあるかも」と思ったけれど、その後のラテンを演奏しながら行進する人達は全く記憶になかったし、その後も何も覚えていないからそのまま観ていたら、ブライアンイーノの曲が流れて、やはり観たことがあった事を確信した。
Brian Enoの「By This River」
急に始まるイントロが映画の雰囲気に合っていない気はするけど、すぐに馴染んでずっと聴いていたくなる不思議な曲だ。
息子を思い出して、過去に浸りたいシーンには、ぴったりだと思った。
何度も使いたくなる気持ちも分かるが、どうせならもっと長く使って、ここぞという時の一度にして欲しかった。二度目は明らかに効果が薄れていた。
息子が亡くなるのが早いタイミングだったので、これからどうなるのかと思っていたら、その後に家族が息子の死と向き合いつつ、前を向いていく過程の映画だった。
精神科医である父が、息子を亡くす事で、患者を治療できる立場ではなくなってしまう。という設定が面白かったので、もっと展開されるのかと思ってしまった。
患者を自身と重ね合わせたり、何度も同じことを言っていた患者の気持ちがわかるようになったり、そこに復帰へのキッカケが生まれると予想して観てしまっていた。
息子の部屋というタイトルの通り、息子の部屋からアンモナイトが出て来たり、何か展開があるかと思っていたが、特に何かが起こるわけでもない。
ただ現実は、この映画くらいのものかもしれない。
息子が部屋で撮っていた写真は、とても良い笑顔で、きっと家族に見せるそれとは別の顔だったのだと思う。
アンモナイトを盗んだ事を母には自白した息子だったが、仲良く見えた家族の中にも嘘や秘密があり、息子の事は誰にも分からない。
客観的に見ると、息子と元彼女も、彼女と呼べるほどに親しかったとも思えないが、息子の過去を美化し、それで前に進めるのであれば、良いと思った。
ラストシーンの海岸のショットがとても良かった。過去ではなく、これからを見ている家族に見えた。
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⬜︎赤いパーカーの息子と、青い服の他の家族たち。
赤い船が反射して赤く見える海と、その他全体的な青い色彩。
⬜︎アンモナイトを盗んだ息子は、家族の何かを盗んで行ってしまう。
⬜︎海へ出かける息子を止め、ランニングしていれば良かったと後悔し続ける父が、それを回想するシーンも良かった。
安っぽくなりそうなのに、何故か見ていたくなった。息子が亡くなるのが、かなり序盤だったのもあるかも。
⬜︎息子が部屋で撮っていた写真の笑顔
⬜︎「なんで国境まで来てるの?
これから試合なのに!」
「なんで笑ってるの。」
ここも何か良かった。
何を亡くなった息子の事なんて気にしていたのだろうか。元彼女も、前に進んでるじゃないか。みたいな前向きになる瞬間のようで良かった。
⬜︎盗んだアンモナイトは結局、返そうと思っていたけど、無くした?
⬜︎海岸でのラストシーン
⬜︎ブライアンイーノ「By This River」