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ふたりのmetalicheartのレビュー・感想・評価

ふたり(1991年製作の映画)
4.4
不慮の事故で姉が亡くなり、
残された妹の成長物語。

人生で一番辛い時期に見て、
嗚咽するほどバスタオル抱えて号泣した。

映画の公開前に、NHKで前後編90分でやったのだけど、そちらの方がタイトで見やすかった。本作はちょっと長い。

でも、姉妹の背景や心情が分かりやすく、また辛い事も多い。
当時の自分の状態から、姉妹2人の気持ちが分かりすぎて、まるで自分の物語と思う位。
だから、亡くなった後でも幽霊になって見守り助ける姉、そして10代にはあまりにも困難を叩きつけられながら自立していく妹が、愛おしくて、苦しくて仕方なかった。

中学生にとっては、まだ世界は小さくて、家族が占める割合は大きい。
それがある日から、崩壊が始まる。
石を投げられてひびが入ったガラスが、小さな音をあげながら、少しずつひびが広がる。あの圧迫感と閉鎖感。
ジリジリ壊れていく中、自分1人を守るのが精一杯。
青春の苦悩、青さなんて綺麗事じゃない、あまりにも残酷すぎる日常。
その中生きていく妹を、亡くなった姉が支えていく。
姉の死から、こんな現実になったのではなく、姉の存在が防波堤となって妹を守っていたのだ。
この防波堤がなくなって、妹が防波堤になっていく話でもある。
正直キツイ、キツすぎる。
そこには、この困難を乗り越えた芯の強さがある。

妹を残して去ってしまった姉の苦悩、突然荒波に放り込まれてしまった妹が、協力しつつ成長。
この姉妹の愛が満ちている。

決して見るのが辛い作品ではない、温かく優しいファンタジー。
でも、そこには厳しい世界があるからこその表裏一体。

石田ひかりと中嶋朋子、似ている2人ではないが、次第に2人が似て来る。
鏡のシーンもだし、ラストの高校の制服を見ると、どこで変わったのかは分からない。
そして、事故現場に花を手向けていた運転手の姿は、優しさを感じる。

エンディング曲の草の想いは、今でも聞くと泣いてしまう。
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