OASIS

美しきセルジュのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

美しきセルジュ(1957年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

病気の療養のためパリから小さな町に帰省した男が、変わり果てた幼なじみの姿を目撃し彼を立ち直らせようとするという話。

「沈黙の女」等のクロード・シャブロル初監督作。
カイエ派を代表するシャブロルがヌーヴェル・ヴァーグの原点とも言えるロケ撮影や大胆な手法を用いて、寒村の風景と人間味溢れる人々をリアルかつ流麗に写し取った意欲作。

結核を治療する為故郷へとやって来たフランソワは、幼馴染でかつては建築家の夢を持ち希望に溢れていたセルジュが、今はとんでもないクズに堕ちてしまったという噂を聞く。
酒浸りの日々を送り、薄汚くて未来に絶望する「美しきセルジュ」というタイトルとは正反対のその姿。
あるいはドブネズミが放つ澱の底に微かに光る美しさか。

どうしようも無いセルジュのみならず、彼を奮い立たせようとするフランソワすらも、セルジュの妻の義妹の誘惑に負け愛欲に塗れる。
セルジュの妻が身重でその状況を目の当たりにし痛いほど妻の気持ちを理解しているにも関わらず。
つまりは男なんてシャボン玉。
浮いて揺られて破滅して。
「セックスが目的だったんだよ!」と余りのド直球で言われると「お、おう」と何も言い返す事が出来ない程の衝撃波に襲われる。

登場人物同士が歩きながら会話を繰り広げるシーンの長回しは、流れるようで非常に軽やか。
たちまち急旋回し、そしてピタリと立ち止まり行く先々で待ち構えるその存在感を感じられずにはいられないカメラワークのスタイリッシュさに驚く。
話は弾み、映像はステップを踏み、心は宙に舞い上がる。

どうしようも無い男が赤ん坊の誕生によってあの頃の笑顔を取り戻すという、希望と雪解け。
確かにその笑顔は完璧に人間らしく、そして美しかった。
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