キャサリン子

陽はまた昇るのキャサリン子のレビュー・感想・評価

陽はまた昇る(2002年製作の映画)
4.0
家電AVメーカー・日本ビクター本社開発部門に勤める開発技師、加賀谷静男。
あと数年で定年を迎える彼に、横浜工場ビデオ事業部への異動命令が下りる。
そこは赤字続きの非採算部門。加賀谷に課せられた指令は、大規模なリストラだった。
しかし、加賀谷は従業員たちに向かって夢だった家庭用VTR開発の決意を打ち明ける。しかも、誰もリストラに追い込んだりはしない!と言うのである。
それを聞いた次長の大久保は止めに入った。それもそのはず、本社がリストラ対象の赤字部門にそんな計画を認めるはずもない。
ましてや、この時、家電メーカー大手のソニーが商品化にあと一歩の所まで漕ぎ着けていたのであった……。


第26回日本アカデミー賞優秀賞受賞作品(ちなみにこの年の最優秀作品賞は、たそがれ清兵衛)。


VICTORが挑んだVHS開発の実話。
主人公・加賀谷静男は、事業部長だった頃にVHSの開発を指揮し、「VHSの父」「ミスターVHS」と呼ばれ、のちにビクターの副社長となった髙野鎮氏をモデルにしている。


終盤20分は、ほぼ泣いてた。
結末がわかっていても、それでも涙なくしては観られなかった。

VHSは必ず人々に喜ばれると信じ、並外れた熱意で工場内をひとつにまとめた加賀谷部長。
赴任してすぐに工場内の全社員の名前を覚え、「“下請け”という言葉は好きではないから」と、下請け業者を「協力会社」と呼んだ。
部長という立場に胡座をかかず、偉そうに振る舞うこともなく、社員には「同じ夢に向かっている仲間」として接した。
社員にとって加賀谷は、頼れるリーダーであり良き相談相手であり戦友でもあり……。人望も信頼も厚かった。



「あなたは、ええ部下をもったのう。

なにごとも、人ですなあ」

松下幸之助氏が加賀谷に言ったこの言葉が印象的だった。
やはり、結局最後は「人の心」なんだなぁ。



作中では描かれなかったエピソードがある。
加賀谷は退職後しばらくして亡くなったのだが、葬儀のあと霊柩車がビクターのビデオ工場に立ち寄り、社員が総出で涙を流して見送ったとのこと。


本作は、社会人にオススメ。
仕事とはなにか?を教えてくれる。

特に、ものづくりに携わる仕事をしている人には是非観て欲しい。
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