ボブおじさん

南極料理人のボブおじさんのレビュー・感想・評価

南極料理人(2009年製作の映画)
3.4
南極観測隊員の日常を描くコメディー映画。昭和基地から離れた南極ドームふじ基地にやって来た8人の観測隊員たち。楽しみといえば食べることくらいの極寒の地で料理人の西村(堺雅人)は腕を振るって隊員たちをもてなすが…

主演の堺雅人ら出演陣のクセある演技は見応え十分。とはいえ、この映画の真の主役は、何といっても“料理”だろう。
フードスタイリスト飯島奈美による伊勢海老や和牛などを使った料理の数々は目にも鮮やかで食欲をそそる。

ただ大きな事件があるわけでなく、日常の中の些細な出来事の中にある可笑しさを描くのであれば、南極での過酷さとの比較をもう少し表現してほしかった。

予算の関係もあるので実際に南極でロケをすることができないのは仕方がないかもしれないが、冬の網走がロケ地となったため、屋外でのシーンに自然背景の描写が少なく主に基地内でのシーンが多かった。

この手の映画では、いかにその環境が過酷で厳しいものかを風景描写で描くものだが、残念なことにその重要な部分を堺雅人のナレーションで逃げている。

マイナス57度という過酷さの描写が弱いため、せっかくの食事のありがたさも半減される。更に笑いにおいて重要な要素となる緊張と緩和の緊張の部分が十分に描けておらず、ただ単にホッコリとする笑いになってしまった。過酷な描写との対比があって初めて緩い笑いが活きてくる。

沖田修一監督独特のユーモアセンスは好きなのだが、南極という特殊な舞台を描くのであれば、それをもっと活かした演出を期待してしまった。
予算が限られた中、それでも敢えてこの原作にチャレンジするのであれば、予算のハンデを覆す描き方を見せて欲しかった。


2014年9月劇場にて鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。