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BALLAD 名もなき恋のうたのodyssのレビュー・感想・評価

BALLAD 名もなき恋のうた(2009年製作の映画)
3.0
【姫の役はどうかな】

映画館で見て損はないけど、お薦めというほどでもない、そんな出来ですかね。或いは、可もなく不可もなし、かな。
なお、原作のアニメ版は見ていません。

実写である以上、配役が重要ですが、男性陣はまずまずでしょう。草なぎ君がまず適役。ヒゲが似合って、いい男になっている。これからは現代物でもヒゲ付きでいったらどうかな、なんて思いました。仇役の大沢たかおも結構いい味を出しているし、中村敦夫も、新垣結衣の父親にはやや年をとりすぎている感じはあるけど、それなりの貫禄がありました。

対して、新垣結衣はどうですかね。庶民の娘なら彼女でいいけど、お姫様役にはちょっと足りないんじゃないか。というのはこの作品の設定としてお姫様ならではの高慢さもあることになっているんだけど、彼女にはそういう味がないから。お姫様の高慢さ、と同時にその裏にある女っぽさやもろさや優しさを出すのは、結構大変なんですよ。思ったのは、柴本幸なんかだったらどうかなということ。

なぜお姫様役の女優が大切かというと、このお話の根幹にあるのは、一人の女性を二人の男で争うという構図だからです。大沢たかおは勢力のある大名で、武人としての腕も立つ。その彼がわざわざ小国の姫をめとりたいと言ってきたのは、単に政治のためではなく、作中で描かれているような出会いがあったからですね。つまり権勢高い武人を相手にしても一歩も引かない気の強さと気位の高さが姫にはあって、そこが彼の征服欲をそそったわけです。したがって、姫は単に美しいだけでなく、下らない男なら寄せ付けないくらいの気位が感じられないといけない。実写版である以上、そういうところにちゃんとこだわる必要があるのです。

筋書き的には、もともとが子供や家族連れで見るアニメが原作だから、ちょっと甘いなと思えるけど、それをぐだぐだ言っても仕方がないでしょうね。時代劇だけど、実は現代劇なんですから。ただ、クルマで突っ込んで参戦するところでは、敵方もいくらなんでももうちょっと攻撃をしかけてきてもよさそうな気がするけど。リアリティがなさすぎますね。

それと、最後の石碑は、旧仮名遣いなら「ありがとう」じゃなく「ありがたう」でしょ、なんて言うのは野暮だよね(笑)。
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