櫻イミト

路上の霊魂の櫻イミトのレビュー・感想・評価

路上の霊魂(1921年製作の映画)
3.0
大正10年(1921年)制作&公開。松竹(設立1920年)の現存最古の作品。歌舞伎、新派の影響を受けていた従来の日本映画とは全く異なる画期的な作品。2つの物語を並行的に描く手法や、寛容と不寛容を主題としていることから「イントレランス」(1916)の影響を受けていると言われている。軽井沢ロケ。

「ストーリー・オブ・フィルム エピソード1. 映画の誕生」(2011)の本編で唯一登場した日本映画。”アジアでのパラレル編集の先駆け”と紹介されていた。

クリスマスのとても悲惨な物語。欧米に並ぶ映画を作ろうという志の高さはひしひしと感じた。前半は構成がやや複雑なので弁士がいないと映画に入り込みにくいかもしれない。後半になると粗筋も把握できて映像の工夫も楽しめる。大スケールで見せる大木の伐採風景、疲労の中で若い時の自分自身と問答する二重特撮、心の動きを木材が倒れる画のモンタージュで表現、などなどかなり頑張っている。

当時は先進すぎたためか興行的には失敗だったとの事。しかし100年経った今も世界の映画好きが目にしているのだから、制作者たちの努力は大きく報われたと言える。

リアルな大正モダンを目の当たりにできるという点でも大変貴重な一本。

※1921年の外国映画
「嵐の孤児」(アメリカ/グリフィス監督)
「愚なる妻」(アメリカ/シュトロハイム監督)
「死滅の谷」(ドイツ/ラング監督)
「不運な人々」(デンマーク/ドライヤー監督)
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