Ryoma

ストーカーのRyomaのレビュー・感想・評価

ストーカー(1979年製作の映画)
4.3
もちろんいい意味で偏執的な感覚、神経質な感覚、人間が併せ持つ最も鋭敏な感覚を湿っぽい大気に向かって解放する、そんな感覚。タルコフスキーの映画からは常に、人間と自然の狭間でぼうっと灯される魂のような、微妙で危うい感覚を感じる。
で、個人的な話を言うと、この映画「ストーカー」よりも、ひとつ前の作品である「鏡」の方が、より極まっていると思ったから、スコアは「鏡」より低くした。この映画は、何というか、かなり完璧な映画であることは間違いないのだけれど、例えばラストシーンに代表されるように、タルコフスキーの感覚が、超現実的なところまでいきなり達してしまって、それがなんとも頼りない気がして、「これでいいのかなあ」とちょっと嘆息してしまうことが多々あった。それはつまり映画の基盤である「物語世界」を置き去りにして、「映像感覚」が上へ上へ伸びてゆく感覚、または奥へ奥へ潜ってゆく感覚、なんだけれど、なんかそこら辺の感覚同士の超現実的な乖離が、うまく乗れなかったかなあ。対して「鏡」は、最初観た時は物凄く頼りなく感じたが、二回観ると、先述した物語と映像の感覚同士が、緊密に絡まり合って、同時に呼応・共鳴し合って、結局高め合っている風に感じられ、かなり納得し、大いに感動した。だから、この映画ももう一回観ると、また違う感想を抱くかもしれない。けれども当分観る予定は、ないかな。
Ryoma

Ryoma