えいこ

ストーカーのえいこのレビュー・感想・評価

ストーカー(1979年製作の映画)
4.0
「ゾーン」と呼ばれる特別な場所を訪れる3人の男。見たところ人気のない廃墟と荒れた自然があるだけなのだが、案内人である「ストーカー」の説明により、人知を超えた意味が付加され、映画は哲学的になっていく。男たちの台詞は、会話の形式でありながら独白めいていて、お互いに解け合うことがない。相手は鏡のように自己を明らかにしていく存在である。作家の独白は監督自身の投影のようであり、教授の独白は、核を持て余す科学者の象徴に見える。「ストーカー」は、わずかな希望にすがる迷える仔羊のような我々一人ひとりか。

繰り返される水音と様々に姿を変える水のイメージは健在。特に3人のゾーンでの最後のシーンで降る水は、緊迫したやりとりで現れた無意識の本性を諦め浄化するようで心に響く。白骨から細々と伸びる樹にも少しだけ救われる。

女性は妻と娘だが、他作に違わず、現実的で地に足が着いている。不思議な力は未来への希望か。終始チェルノブイリを連想しながら見たが、制作年は事故のずっと前であった。
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