設計士あーさん

海と毒薬の設計士あーさんのレビュー・感想・評価

海と毒薬(1986年製作の映画)
5.0
小説の副題、「神なき日本人の罪の意識の不在」は、現代日本人にも言い得る表現である。あなたは、神の裁きが怖くないのですか?というオランダ女性の発言はあまりに無神経に刺さり、そして金色のうぶ毛にまで腹が立つという気持ち、分かるなぁ。逆恨みだと分かりつつ。

原作の小説を幾度となく読み返し、こんなに胸が熱くなる作品はないと思っていたが、映像として作品を観るとこれ以上は再現できないだろうと、そのくらいの熱量を感じられた。
原作の方が優れているのは言うまでもないが、現代の技術では、現代の役者では到底表現しきれないのではないかと、そのくらい鬼気迫るものがあったし、この時代の役者は間違いなく「戦争の足音を聞いて育った」ので作品の解像度が高いのだと考える。