【第36回カンヌ国際映画祭 パルムドール】
大島渚の『戦場のメリークリスマス』がパルムドール最有力と言われていた中での大逆転で、この他にもブレッソンの『ラルジャン』、タルコフスキーの『ノスタルジア』など強豪ひしめく中栄冠を手にした。
製作の東映も誰も期待しておらず、プロデューサーと主演の坂本スミ子だけがカンヌに行ったことなども有名。
今村昌平というのは不思議な監督で、特徴をつかみづらい。ジャンル分けができない。
リアルな部分もあれば誇張が激しいところもあるし、コメディ的な部分もあればすぐにシリアス調になるし、陰鬱な部分もあればカラッと元気な部分もある。
蛇やカマキリの交尾と人間のセックスを並置することで、「人間も所詮は動物なのだ」という視点と「聖なる儀式」としてのセックスという視点を同時に抱く。
貧しさの中で人間が人間たる要素とは何か。それはやはり親子の絆。ラストの演技は圧巻だった。