バナバナ

フライ,ダディ,フライのバナバナのレビュー・感想・評価

フライ,ダディ,フライ(2005年製作の映画)
3.6
6週間で強くなります…って、ライザップかと思いました(笑)。

これ、岡田准一くんと堤真一さんが『SP』よりも前に、初共演している作品なんですね。
岡田くん、もうこの頃から修斗などを習得してたんですね。
ロープを腕だけでスルスル登っちゃうし、脚を使った寝技も楽々キメてるしで(笑)。

スンシンと鈴木さんの関係が面白い。
気の弱い普通のサラリーマンの鈴木さんと、高校生とは思えぬ落ち着きと、「この子、いったい何者なの?」という位、武道の師匠の貫禄を持っているスンシン。

しかし、こんなに強いスンシンも、ゾンビーズの仲間と一緒の時も孤独感を漂わせているし、
誰も居ない家に帰った時も「ただいま…」と一人でしゃべって、
飼っている犬にパンをやる姿も寂しげだ。

彼が強くなろうとしたのは、在日である事で起こった事件から、誰にも頼らず、逃げずに立ち向かおうとしたからであるが、
中年男の鈴木さんが頑張る姿に父性を感じて、
「強くなったら、俺を守ってくれるか?」と少しだけ甘える姿が切ない。

このスンシンのキャラクター、下手したら、ただのキザで恰好付けな人物に見えそうなところを、
素の性格も実は熟考型で物静かだという岡田くんが、自然に孤高の在日の高校生を演じている。
鈴木さんのトレーニング中に本を静かに読んでいる姿など、まんま岡田くんやない?と思ってしまいました(笑)。

昔、『僕らの時代』で岡田くんが、堤さんが姿勢で役柄を演じ分けていて参考になった、と言っていましたが、この作品の鈴木役の事だったんですね。
堤さんが、最初は猫背でしょぼくれていて、走る姿もヘロヘロで様にならなかったのに、だんだんきれいなフォームになって、最後はバスを抜き去る姿が壮観でした。

スンシンは鷹になって空を飛ぶイメージを大事にしていたけど、
この作品には、いつも高い空が広がっていました。
鈴木を助けてくれた気のいいゾンビーズの面々と共に、偏差値の低い高校に通っていようが、在日だろうが、精神性が高い人は高い。
気弱だった鈴木も目的をやり遂げて強くなって、最後は高い空に飛び立っていく様な演出が素敵でした。
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