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1900年のtorumanのレビュー・感想・評価

1900年(1976年製作の映画)
4.6
1901年、同じ日に生まれた地主と小作人の息子を軸に、波乱に満ちた時代を綴った、ベルナルド・ベルトリッチ監督の壮大なドラマです。

春夏秋冬でエピソードが分かれています。
主人公たちの幼少時代は夏、大人になった二人の交流は秋、ファシズムの訪れは冬、戦争の終結は春。
撮影監督のヴィットリオ・ストラーロは、時代の移ろいをスクリーンに焼き付けています。

【夏】
地主のアルフレード(バート・ランカスター」と、小作人の棟梁レオ(スターリング・ヘイドン)。
相容れない立場の違いはあるが奇妙な友情で繋がっています。
2人は孫の2人にバトンタッチするように世を去ります。
2人の少年の背景になる映像が素晴らしい。
まるでピサロかコロー、そしてミレーの絵画のようです。

【秋】
青年になったオルモとアルフレード(祖父と同じ名前)は、立場こそ違え友情を育んでいきます。
血気盛んだけど純情なオルモ、世間知らずでボンボンのアルフレード。
オルモをジェラール・ドパルデュー、アルフレードをロバート・デ・ニーロが演じていますが若い!2人の共演も貴重です。
自由人の叔父オッタビオと歳の離れた友達のアーダ(ドミニク・サンダ)が物語に華と明るさを添えます。
モダンでオシャレでカッコいい♪
2大俳優を相手に回しても、屈服させていまう存在感です。
「モダン?」「未来派よ」

地主の搾取にストライキを行う小作民、それを検挙する警察、カモ狩をしている地主一族。
それぞれの立場とイデオロギーが川を挟んで繰り広げられるパノラマのような映像が圧倒的です。

ファシストに惨殺される共産主義「人民の家」の人々。黒に赤の葬列
鮮烈にて力強いビジュアルです。

【冬】
ファシストの台頭と狂気が物語を引きずり回します。
アッティラ役のドナルド・サザーランドは、弱い者に残忍なファシストのリーダー。
猫を頭突きで惨殺、少年を犯した挙句に頭を叩き割る、老婦人を門の鉄柵で串刺し。
恋人のレジーナを加えて、さらに行動が加速していきます。

アルフレードと結婚したアーダも、ファシスト達に何もしないブルジョワジーに嫌気がさして家を出て行きます。
色が単一になり失われていきます。

【春】
「解放の日」
第二次世界大戦が終わり、アッティラ達にも終わりがきます。
また、地主であるアルフレードにも。
赤一色に塗りつぶされます。

『暗殺のオペラ』『暗殺の森』と同様に、この作品も、共産主義的な政治姿勢が色濃く反映されています。
ただ、ベルトリッチの政治的な思いが、映画を損なう事なく、むしろ力強さと輝きを作品に与えている気がします。

映像表現の素晴らしさ、大河の如く隆々とした物語をつぐむ脚本、各国の素晴らしい俳優の演技、それら全てを彩るエンリオ・モリコーネの音楽。
今後再現出来ない程の才能が集まって出来た最高の現代芸術です。

5時間16分の作品、今後見る機会も少ないと思いますが、死ぬまでに後3回は観たいと思います。
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