ぷかしりまる

ももへの手紙のぷかしりまるのレビュー・感想・評価

ももへの手紙(2012年製作の映画)
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読まれるはずのない手紙が届くといいな。永遠の不在である死者に想いを伝え、その返答を得ること。それは本来あり得ないことだけど、死という断絶を前に悔いている人であれば、一度は望むことかもしれない。わたしは物語の役割とは、本来あり得ないはずの切実を疑似的にでも物語の中で叶えること、そして切実を抱えていた人物が生きる力を取り戻すことだと思う。なぜなら切実な思いに限って、なかなか言葉にできず、言葉にすると笑われあり得ないと言われるものだから。だからそういうものに対して真剣に扱った作品に意味を見出すことが多い。cf:濱口竜介の「偶然と想像」に対して切実な作品だと思った…あまり覚えてないけど。そしてふと思い出したから記録しておくと、わたしが大好きな漫画は手塚治虫の「るんは風の中」。物語で主人公の少年はポスターの中の女の子に一目惚れをし、彼女は主人公に話しかけ、良き対話相手として絆を育んでいくが、誰にも理解されない。思春期の疎外感とそれを和らげてくれる誰か、しかしその誰かに対する思いは周囲から理解されず、客観的に見ればまるで写真に話しかけるような一方的な片思いに見える。そして主人公自身もそのグロテスクさを理解しているが、るんの行動により主人公はやがて現実生活に戻ることができる。

話が脱線したが汗、この映画は本当に素晴らしかった。不在の中心を軸に残された者の姿を丁寧に描いている。ももの止まっていた時間が進み出して良かった。もものお母さんはいつかパートナーのことを思い出せなくなるのだろうか、もしそうであっても罪悪感を感じずにいてほしい。ももはお母さんに「お父さんのこと忘れちゃってるんだ!」って怒った。だけどそれは悲しみに押しつぶされずに新しい生活を始めようとする意思だった、そしてお母さんにあなたが誰かを思っていた記憶が失われても、確かに誰かを想っていた事実は消えないと伝えたくなった。

話は切実なテーマを扱っているのにおセンチな感じにならず、バランスが取れてて楽しい。すっとぼけ妖怪のキャラクター(いちばんちっこいのが好き)もみかん畑の乗り物(名前わからぬ…)での vs 🐗デッドヒートもすごいワクワクした!あんまアニメに詳しくないけど妖怪トンネルの作画と水中にドボンする作画がえぐかったのでアニメーターのみなさんはさぞ大変だったろうと思いました。