凪

タクシードライバーの凪のレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.5
ラスト、めちゃくちゃゾワっとする。
前半、孤独に苦しむトラヴィスだったが、殺人の計画を企ててから段々と別人のように生き生きとしていくのも怖かったし、たとえアイリスのための殺人だったとしてもそれが正当化されて英雄のように扱われるようになるのも怖かった。そして、それがおかしいと思わないトラヴィスと周りの人が怖い。

ベトナム帰還兵の孤独というものをとてもよく表していると思った。最初に「銃はいらない」と言ったトラヴィス。アイリスを自由にしてあげることで、自分にもなにか平和のために良いことができるのではないかと考え、生きる目的を見つけるが、その為の手段として銃が真っ先に思い浮かんでしまうところに当時のアメリカ人は共感したんじゃないかな。ベッツィーとのデートでポルノ映画を選んだのも、ベトナム戦争の基地ではそういうものしか放映されてなくて、自分にとってはそれが普通で当たり前のことだからかなと思った。これは完全な私の主観ですが。
ラスト、トラヴィスが孤独から抜け出したのを見て少し安心しました。

デニーロの演技力がトラヴィスの静かな狂気を引き出していました。見終わった後に、ジワジワと心に重くのしかかってくる、一言では言い表せない何かを感じるような作品です。
凪