タクシードライバーのyossieのネタバレレビュー・内容・結末

Jokerを前に。
見ていて複雑な気分になる作品だった。
タクシードライバーもキングオブコメディも狂気を感じた。

ニューヨークのちょっと荒んだ街の中を夜間夜間のタクシードライバーとして働くトラヴィス。海兵隊を退役して一人無機質な都会の古びたアパートに住んでいる。夜間なのは不眠症だからだ。
淡々とした毎日の中、仕事を終えた朝トラヴィスはそんな無機質な街の中に天使をみた。
恋に落ちたトラヴィスはまるでストーカーのように女性の職場の選挙事務所付近にタクシーを止め続け、彼女の様子をじっと伺う。これだけでも気持ちが悪い。
気になるものは見知らぬ相手に不信感や不安感を感じさせるほどに凝視したり後をつけてみたり。不審者要素を十分に持ち合わせていることがよく分かる。
そんなトラヴィスが天使な彼女をデートに誘うも何故かポルノ映画。当然彼女の怒りを買い、何度も花を送ったり弁明しようとするも受け付けてもらえない。
孤独な環境がますます彼の屈折した感情を助長させる。
年長のドライバーに相談するも、「なにかでかいことをやらかしたい」とかなり危ない発言をする。年長のドライバーに「俺たちは負け犬なんだ」と自分の身の程を悟るように言われるがそれも恐らく自分を否定されたように感じただろう。

孤独さがどんどん彼を内面から追い詰め復讐心を駆りたて彼女や彼女の雇い主たる議員を殺害しようと企てる。一方彼の内でギャングから逃げたくても逃げられないでいる12歳の娼婦アイリスが気にかかり出す。
12歳はまだ人生これから。やり直しがきく年齢だ。「負け犬」と言われた彼からは未来ある子供に自分のような思いをさせたくなかったのではないか。狂気の計画の実行前にトラヴィスはアイリスへの遺書と貯めたお金を残す。
彼は死にたかったのだ。否定された自分、立場の惨めさからも脱却するために。存在感を示すために。

結果議員殺害に失敗したトラヴィスはそのままアイリスとギャングのいる建物に向かい、彼女を離さないギャング達を瀕死の状態になりながらも殺害する。彼は死にたかったのだ。否定された自分、立場の惨めさからも脱却するために。
結果彼は少女をギャングから救ったということで世間から賞賛される。
最後彼が普通の人に戻れたのは、彼が勇気ある尊敬されるべき存在という地位を獲得したからだ。都会という大量無機質な社会の奥底で誰にも相手にされないという孤独が生み出す狂気。そんなものを描いてると感じた。

あと音楽が渋い。この時代の雰囲気を表しているようで良かった。