ぴのした

タクシードライバーのぴのしたのレビュー・感想・評価

タクシードライバー(1976年製作の映画)
3.8
ジョーカーの下地になっていると見られるシリーズその2。キングオブコメディと同じく、スコセッシ×デニーロのコンビだけど、こちらは終始空気が重たい。

夜のぼやけた街の灯とジャジーなBGMを背景に、一人称で語られる孤独なタクシー運転手の物語。

彼が孤独の末に暴走する過程を描くといいながら、実のところ彼がなんで凶行に走るのかよく分からなかった。

「ゴミ溜めのような街」への不満や、女に振られたことへのフラストレーション。といえばなんとなくわかった気になるけど、街の治安が悪いことが直接主人公に害を与えてる感じはあんまりしないし、女に振られたのも自分が悪いし。

なんで銃を持って暴れるって発想になるのかピンとこない。ジョーカーほど社会に出口を無くされている感じがあれば分かりやすいんだけど。

というのもこれは時代性が強い映画なのかも知れない。国のために頑張っても報われない、コミューンみたいな時代の流れにも乗れない、悪ぶろうとしても黒人が大きな顔をしていて居場所がない。

少女にバカ正直な説教をするほど真面目な主人公だからこそ、そういう理不尽さがまかり通っていることが我慢ならないのかも。

主人公の孤独も、この時代の白人男性特有の切迫された孤独感からくるものなのかも知れない。

劇中で多くを語らなくてもアメリカ人ならピンとくるものなのか。ランボーもワンスアポアタイムインハリウッドも同時代に居場所をなくした男たちの話だった。

映画的な面で言えば、クライマックスの銃撃戦は引き込まれた。静止画のように画面が切り替わり、次々と人が死んでいくさまはヒッチコックのよう。スローな流れの中、宙を浮いていく冷徹で大胆なカメラワークもスコセッシらしい。