みんと

タクシードライバーのみんとのネタバレレビュー・内容・結末

タクシードライバー(1976年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

脚本を手かげたポール・シュレイダーは、アラバマ州知事を銃撃した、アーサー・ブレマーの「地下生活者の日記」を元に「タクシードライバー」を書き、それにスコセッシ監督が熱狂し映画化したそうだ。

この三者に共通するのは「孤独」だったらしい。それぞれの孤独のバックグランドは長くなるので省略。

そんな「孤独の経験」を抱えた監督と脚本家による今作のトラヴィスの「孤独」とは、過剰な自意識を持ち、他人に対して嫉妬深くなり、「自分は神に選ばれし孤独な男だ」、という妄想を引き起こしてしまうくらいの「孤独」である。

私が好きな「時計仕掛けのオレンジ」のアレックスも言うまでもなく「狂気」的だ。社会への不満を、超暴力やセックスにぶつけたアレックス。(原作を読んだが映画よりかなり過激)
しかし、「自分は神に選ばれし孤独な男で、殺人を犯して歴史を変えたい。自分を孤独にしてきたやつら、今に見てろ」というトラヴィスの考え方は、流石に理解に苦しむ。アレックスより狂気に満ちてる。殺人に対する考え方や、女性を目の前にして性に走るアレックスのほうがまだ可愛く見える。(トラヴィスとアレックスの経験値の差や年齢差があるというのもあるが。)
トラヴィスも女性の温もりや愛情を求めてきたはずだ。これは人間の生理的欲求だ。しかし彼の「孤独」はそれを「銃で人を襲い社会を驚かせる」という狂気に変えた。

私はこの、人間の生理的欲求をも超えて「殺人をしたい(殺人そのものというよりそれにより自己主張をしたい)」という考え方に変えてしまうほどの「孤独」に人間の狂気を感じた。それと同時に、彼の「孤独」を生んだ、ベトナム帰還兵への扱い、人種差別、乱れた治安などの、酷い社会的背景にも狂気を感じた。そして、そんな「孤独」が引き起こした「殺人」が最終的に称賛にかわる酷い社会にも恐怖を感じた。

しかしこれが人間の本性なのかもしれない。
みんと

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