尿道流れ者

転校生 -さよなら あなた-の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

転校生 -さよなら あなた-(2007年製作の映画)
2.8
非常に良かった名作の小林聡美版に比べるととても残念な仕上がりになっていて悲しい。それがセルフリメイクというのも何とも言えない物悲しさ。

この映画自体はとても良いし、旧作には無い観点での物語や歌の使い方などはとても印象的で良い。
旧作が性的な危うさをはらんでいたのに対して、今作では生き死にで揺れ動く少年少女の危うさに変わり、両作が性=生との共通点を介した人間賛歌になっているところも、非常に上手いし面白い。

ただ旧作と同じセリフを使ったりすることでどうしてもこの作品ならではの存在感を意識しにくい。旧作ありきのという部分が拭えない。

また中学生という設定にしては、死に対して達観しすぎている気がして気持ちが入りきらなかった。中学生にとってはまだ死は現実ではないような気がする。もちろん身内の死などを経験していれば別なのだろうが、この作品の登場人物はそうではない。死に対する中学生の生々しい痛みというものが無かった。しかし、死を覚悟した美しい人間の生き様や、死に近づく人と周りの関係などは青く美しいものとして印象的に伝わってきた。

相変わらずキャラクターの濃さは素晴らしく、卓球のラリーのような高速で行き交う会話など演出は素晴らしい。この後に、この空の花や野のなななのかのようなバッキバキの映画を撮ることを考えれば習作としては実験的でありながら、とても素晴らしい完成度だと思う。