チーズマン

逃走迷路のチーズマンのレビュー・感想・評価

逃走迷路(1942年製作の映画)
3.6
アメリカの軍需工場の作業員として働く普通の青年が、工場の破壊工作の濡れ衣を着せられ警察やら何やらに追われながら、真犯人を追っていき、やがてナチっぽい組織の陰謀に巻き込まれていく、アクションありロードムービーありポリティカルサスペンス風味もありな娯楽作品でした。

とにかく見せ場が盛りだくさんに詰め込んであります。


ちょうど真珠湾攻撃から第二次世界大戦にアメリカが参戦する流れの時代に作られた映画なので、作品全体が一種のプロパガンダっぽさを隠さず打ち出していて、そこも時勢柄を感じられて面白かったです。

自由で多様なアメリカvs怪しくて怖い全体主義という分かりやすい構図で作品を引っ張っていってました。

直接セリフで言われることはないですがあきらかに反ナチズムを強調した作品でしたね。
ナチズムでは用無しとされるような人々が活躍し、アメリカ的な良心で追われる主人公を助けます。
例えば盲目の老紳士だったり、見世物小屋のサーカスの一団だったり、あと個人的に好きだった序盤の長距離トラックの小太りの運転手ですね。
サーカス団の中で唯一嫌な人間として描かれる小人症の男がヒトラーに似せた見た目でずっと威張り散らしているのも当時いかにもありそうないじり方で面白かったです。

ただまあ、そこは今で言うポリコレ的な配慮をあの時代に先取りでやっていたというよりも、あくまで反ナチズムの演出方法として多様性を強調してみせた側面の方が強いのかなと思います。


そういう作品なので、最後の決着の舞台がまさに「自由の女神」で行われるのも必然で、当時のアメリカ人として観たらめっちゃ上がるだろうなと思いました。
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