佐藤克巳

河内山宗俊の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

河内山宗俊(1936年製作の映画)
5.0
音声良好、カラー調整の改訂版で今回拝見したが、学生の頃文芸座で観た時以来の認識に劇的変化。甘酒の露店売りでデヴューした原節子の初々しさと、河内山宗俊河原崎長一郎とヤクザ用心棒中村翫右衛門の路地裏での壮絶な死様に衝撃を受けた印象こそ同じだが、山中貞雄監督作品では、「人情紙風船」に一歩も引けを取らぬ空前の時代劇映画の傑作と判明。これも、我、歳を重ねた思慮深さによるか?河内山の賭場に入り浸りの不肖の弟市川扇升が家老清川荘司の合口をスリ、幼馴染の花魁衣笠淳子と心中、ヤクザ親分坂東調右衛門殺害等の悪さの限りを尽くすが、姉の原節子の美貌と慎み深さに惚れ込んだ二人は赦し追手から逃すプロットが絶妙。また、嫉妬心の強い河内山の女房山岸しず江、女衒の市川莚司こと加東大介の悪態をついた演技は見事だった。勿論、原の絶世の美しさは言う事無し。
佐藤克巳

佐藤克巳