YT。イタリア語版。23-80。舞台はトスカーナの架空の街サン・フォリーノ。そのプロットはミュージカル『マンマ・ミーア』そのまま。もちろんこっちがオリジナルなんだけど大笑い。
なんせ冒頭から、ロッロブリージダの運転する真っ赤なアルファのオープンカーとともにカオスに導かれる。きっかけはアメリカ軍の歓迎式典。大戦の混乱期にこの地に駐在していた部隊が、街を再訪するというので歓迎ムードだけど、ロッロの演じるカルラ未亡人は気が気でない。なにしろ混乱のなかで3人のアメリカ兵とべつべつに夜を過ごし、そのうちの誰かの娘をみごもっていたからだ。
娘は今ではすっかり大きくなった。養育費を3人からべつべつに送金してもらい、そこそこの暮らしができている。娘の父親はキャンベルという架空の英雄で戦士したことにしていた。3人のうち誰が父親かわからなかったからだ。
キャンベルという名前はキャンベル・スープの缶詰から姓をもらったという。コカコーラとキャンベルしか知らなかったから仕方がない。カメラがキャンベルスープの缶缶を映せば、笑いが起きるという仕掛け。
そして今、カルラ夫人が半分騙したようなアメリカ兵が、自分の娘を一目見ようとやってくるという。しかもそれぞれ、夫人や家族を伴って。さあどうする。逃げ出そうと企むカルラだけれど、なんと使用人のヴィットオが気を利かせて娘に連絡し、パリに留学していた娘も帰ってくるという。父親のことを知っている元アメリカ兵に会って話をしたいというのだ。
3人の米兵は、ブラドック(テリー・サヴァラス)とヤング(ピーター・ローフォード)はそれぞれに連れ合いを従え、ニューマン(フィル・シルヴァース)は妻のシェリー・ウィンタースと子どもたちを連れての登場。この元米兵3人のおとぼけぶりも楽しい。
それにしてもロッロブリージダはこのとき40代にはいったばかり。前年には実験映画的なミステリー『殺しを呼ぶ卵』(1967)では養鶏場のブルジョワ夫人、その後はマカロニウエスタンの『無頼プロフェッショナル』(1971)でリー・ヴァン・クリーフの相手にする美しい詐欺師の役を演じるなど、美しさに知性と磨きがかかってきている。
しかし残念ながら、73年ごろから映画出演から遠いてゆくと、写真や彫刻へと表現の幅を広げてゆくのだ。そもそも美術を目指していたロッロ。生きるためにたまたま女優の道に進み、そこで歌や踊りや演技の才能を開花させるのだけど、ほんとうにやりたかったのはアーティストとしての表現活動。
なるほどただ美しいだけの女優ではない。この映画を見ていると、なるほどよくわかる。やるべきことはわきまえて、準備万端で臨み、求められているものを、求められている以上に表現する。
なるほどロッロは、プロであり、そしてアーティストというわけだ。
YouTube の映像はここ:
https://www.youtube.com/watch?v=NUBPKbkeUW8&t=4s