Tラモーン

kocoronoのTラモーンのレビュー・感想・評価

kocorono(2010年製作の映画)
4.0
生粋のバンドマンが集まったバンド、bloodthirsty butchersのドキュメンタリー。

単純に映画としてとても上手く纏っているし、面白い作品だった。

バンドマンとして生きていく4人の姿、特に吉村秀樹の生き様をかなり核心に迫ったところまで表現していると思う。

常にブッチャーズとして新しいことをやりたい。伝説になることを拒み、生き続けることを望んだ男。

ブッチャーズは吉村という強烈な個性の謂わばワンマンバンドだから、彼の頭の中で鳴っている音をどう表現していくかに彼は命を懸けていたんだと思う。
だからスタッフやメンバーが自分の思ったとおりでないと怒るし不貞腐れるし、八つ当たりもする。うまく口で説明できるほど器用なわけでもない。

冒頭のアルバム完全後の契約書面の話と思われる席では「金の話ばっかりじゃねぇか」とあからさまに不満を漏らす。これも吉村がピュアなバンドマンであるが故なのだろう。

イアン・マッケイやザック・デ・ラ・ロチャなど錚々たる海外ハードコア/オルタナ勢からもリスペクトを受け、国内のパンク/ハードコア/ロックンロール界隈のバンドからも兄貴分として慕われる孤高のロックバンド。
売上こそ大きな数字ではないものの、与えた影響はとてつもなく大きいはずなのに、吉村はもっともっと自分の音楽を知って欲しかった。理解して欲しかった。だから彼は「復讐」という言葉で、決意新たにまた歩き出そうとしていた。この映画はその瞬間を捉えたものであったと思う。

バンドが改めて一致団結したかのような場面で流れる「Jack Nicolson」は感涙だ。


この映画は吉村秀樹が亡くなる前に観るか、彼の没後に観るかで印象が違っていたんだろうな。
ぼくは完全に後者だから、もっともっと彼らの産み出す音楽に触れたかったと思うし、吉村自身が一番悔しがっているんだろうなと思う。

大学を卒業して3年目くらいの時に、当時大学4年だった後輩に「ブッチャーズやりたいんでベース弾いてもらえませんか」と頼まれた。当時すでに吉村は亡くなっていて、彼の存命中は名前くらいしか知らなかったんだけど、トリビュートアルバムを聴いたりして、興味を持ってちょうど聴き始めたころだった。

トリビュートに参加していたキングブラザーズがライブで「Jack Nicolson」をやってくれて、渋谷のライブハウスで号泣したのもそのころだ。

二つ返事で快諾して、めちゃくちゃベースを練習した。射守矢のベースは和音を多用したとても独特なフレーズで、音作りこそ得意なタイプだったけどコピーするのはとても苦労した。

ぼくのブッチャーズとの出会いはこんな感じで後追いだったけど、彼らのバンドマンとしての生き様はずっとお手本にしていたいと思う。


「君がこの先大人になっても 
     悪い大人の手本で居たいんだ」
Jack Nicolson / bloodthirsty butchers
Tラモーン

Tラモーン