三四郎

天の夕顔の三四郎のレビュー・感想・評価

天の夕顔(1948年製作の映画)
3.0
ナレーションから始まるのか、ミニヨンの歌かぁ、ゲーテの?と思いながら見ていたが…冒頭から芝居くさいのがかなり気になった…これは演劇だ。階段坂すれ違い場面はよかった。若い男女の心理描写ができている。アンナ・カレーニナ、ボヴァリー夫人、栞に書かれた恋文…不倫示唆のなにものでもない。これはわかりやすすぎて面白味に欠けた。
しかしこの映画、階段坂すれ違い2回、本送ること2回と、2回が好きだな。確かめていないが、もしかすると、京都、神戸、東京の奥様の家にも2回ずつ訪問していたかもしれない。3度目の正直にならないためかしら。そうだとすれば面白いが、監督の真意はわからぬ。
これは文学の映画化であろうと映画を見ていてわかりすぎるほどわかった。きっと原作である小説「天の夕顔」は奥深い純愛小説なのだろう。その美しい文体をそのまま映画化してしてしまってはいけない。映画には映像の演出が重要なのだから、視聴覚に心地よい作品にせねばならない。技巧が必要だ。かと言って、最後の花火は最低最悪だ。あれはロマンチックをとんでもなく通り越してもはやコメディ笑止千万。名作と言われる原作小説をここまで薄っぺらくしたことに驚く。しかし、その中でも美点があり、カメラの眼に映る自然は透き通るようで、構図は完璧なまでに麗しく綺麗で、まさに絵画だ。そして、高峰三枝子はこのころ実に美しい。当時、彼女の右に出る清純で透明感のある女優はいなかったであろう。
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