三四郎

エセルとアーネスト ふたりの物語の三四郎のレビュー・感想・評価

3.0
1928年から1971年、古き良きイギリスの夫婦の物語。

それにしても、イギリス人はドイツがお嫌い。イギリス紳士がよく言う言葉がある。
「ドイツ人はどんな小さな過ちも犯さない。犯すのは最大級の過ちだけだ」

楽天的で陽気な牛乳配達のアーネストと中産階級の貴婦人宅でメイドをしているエセル。二人は恋愛結婚をするが、この夫婦の会話がイギリスの階級社会を克明に表していて実に興味深い。
アーネストは労働者階級出身でエセルは労働者階級の習慣や服装を嫌うので下層中流階級であろう。

この物語の作者である息子が頭が良くて奨学金で上の学校に進学でき、頑張ればオックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学できるかもしれないのに、途中で美術学校に進路を変える。これには勿体ないなぁと思い、母親に同情してしまった。イギリスなんて日本人には想像できないような厳格な階級社会ゆえ、下層中流階級では大学なんて夢のまた夢だろう。

作者は両親の物語を描きながら、自らの後半生を天国の両親、特に母に懺悔したかったのではなかろうか。
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