白昼にも悪魔はいる --- 模造ダイヤモンドから始まる推理劇。息を呑むような美しく広がる景色、壮麗な衣装や美術を捉える撮影、主要な舞台となるホテルの内装、ピーター・ユスティノフがチャーミングに演じるポワロはじめスター達のきらびやかさとアクの強さに目を奪われる(気弱非力な雰囲気漂うレッドファン夫人役にはジェーン・バーキン)し、ヨーロッパでのヴァカンス気分も味わえる。酔いしれそうなほどすっかりクラシックな佇まいと照りつける太陽の光の中、互いに互いを支え交錯する目撃情報、一見よくできたアリバイをくずしにかかる。流石は007シリーズ屈指の人気作品『ゴールドフィンガー』はじめシリーズ初期を支えたガイ・ハミルトン監督、ちなみにこの後に同スタッフと『クリスタル殺人事件』も撮っている。そしてその手際の良さで幾多の登場人物たちの一見バラバラに展開される物語を最後に向けて一本の糸を通していくように巧みに積み上げていく。しっかりと伏線を回収してくれるし、あっと言わされる。手堅い。時が経ってたとえ埃を被ってしまっても、やはりそれなりに楽しめることは疑いなさそうだ。
女性ハイカー
虚弱、運動音痴、哀れみを誘う
