うりぼう

無法松の一生のうりぼうのネタバレレビュー・内容・結末

無法松の一生(1943年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

午前10時の映画祭12

無法者の松が故郷に戻り、喧嘩談義で始まる物語。警官もおおらかに彼の無法ぶりを見つめる。

車夫の前を竹馬の子供達が通り過ぎ、一人が川に落ち、大泣き。見かねて、松が連れ帰る。夫人の指示のもと、医者への送迎を含めお手伝いする。お礼を渡そうとする夫人に、松は仕事でないと拒否。男の意地と見得、寅さんと重なる。

帰宅した軍人の夫に報告、夫も松の傍若ぶりを知っており、晩飯に呼べと指示。夫人、彼を誘い楽しい晩餐。唄いを披露する松、夫人が来ると照れて唄えない。寅さんと重なる。不調の夫、横になり、あっと言う間に急逝する。

墓前で、我が子の為に助力を乞う夫人に松は自分でできることならと了解する。松、それなりにぼんを支え、凧揚げで、運動会で、祭りで、喧嘩で、彼を成長させる。彼は進学し、博多を離れ、夫人との交流も終わり、再び酒に溺れる。

祭の日、教授と帰省したぼんの前で、松は幻の祇園太鼓を披露する。走馬灯のように過去の思い出が流れ、彼は逝く。

葬儀の後、ぼんに残した多額の通帳が見つかり、彼の本気をみる。時間経過のカットバックで何度も回る車輪、彼の必死の稼ぎを象徴。

何重にも重なる映像、凝った編集が作り手の本気を感じさせる。戦争に突き進む日本、不安を感じつつ生きる市井の人々に与えた無償の愛の物語。日本人の心に沁みたのは当然。

ぼんの子役、長門裕之だった、知らなかったな。
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