うりぼう

パリ、テキサスのうりぼうのネタバレレビュー・内容・結末

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

午前10時の映画祭14

トラビス、やんちゃな兄ちゃんが若い娘を捕まえ、気ままな結婚暮らし、破綻寸前に子に恵まれ、立ち直る。変貌ぶりに戸惑う妻、母親も重荷に、荒れ始める。訳の分らぬトラビス、精神崩壊、妻を縛りつけ、子を泣かせ、火事まで起こす。ジェーン、ハンターを連れて逃げ出し、義弟にハンターを預け消える。

トラビスの失踪の原因は、最後のガラス窓越しの二人の対話で明らかになる。その映像はない。ベンダーは、この原因に関心がないのだろう。「天使の詩」の天使降臨後に関心が無いのと同じように。

彼はトラビスの絶望からの回復、前半の弟との旅、後半の息子との旅、2つのロードムービーで彼の贖罪と再生を描きたかったのだと思う。間に挟まる弟宅での出来事が秀逸。

弟との旅では、話す、食べるのがやっとの段階。息子に会い、食器を洗い、靴を磨き、体を動かすことで心も回復する。アンのハンターを奪われるのではと言う不安から、彼にジェーンの秘密を明かす。ハンターと引き離したい作戦は見事に失敗し、ハンターは4年の恩より、母探しを取る。

トラビスはハンターに弟夫婦への電話を強制し、アンを悲しませても、彼は電話に出ない。8才間近の男の子に意思決定させる。何度も帰りたくなったら直ぐ言えと。ハンターは旅グッズと共にトランシーバーを求める。シーバー越しの方が話しやすかったのだろう。

それまで、ほとんど不眠であったトラビス、息子との共同作戦の歓びに心は落ち着き、眠りに落ちる。ハンターの嗅覚で、母を見つけ、追跡、息子を車に残し、男の館に向かう。妻の姿をマジックミラー越しに見て、声を聞き、立ち去る。

息子に母は居たと告げ、ホテルに残し、別れの録音を渡す、再度、館へ。妻と対峙し、ハンターの居場所を伝え、何度も確認し、妻に迎えに行くと約束させて去る。駐車場から1540室での再会を確認し、夕日の中を去る。

その顔は「パーフェクトデイズ」の朝日の中の平山と同じ、多分、彼は心穏やかに日常を過ごせる。可能ならパリの土地に家を建て、家族が来るのを待つのもいいかも。

トラビスの話に何度も父が母とパリで出会ったと語る話が出てくる。多分、これがキーで、その血をトラビスは受け継ぎ、虚勢を張るが、小心者、年下だが格上の妻にぞっこんはけっこんに似ている。持て余す彼は、弟の妻に母の面影を感じ、ハンターに見透かされる。

無意識にアンは、危険を感じ、彼を遠ざける策を発動する。ウォルトは、ただただ経緯を明かさない兄に不満を募らせる、本当にいい人。ハンター、父と母、再開の時の反応が違い過ぎ、別れた時の状況を物語る。
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