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レオン 完全版のICHIのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
5.0

フィルムだあ、と思ったイントロ。結構昔の作品なのに、色がとても綺麗で「フィルムかな?」と分からないくらいだった。


引き画になると一気にフィルム独特の奥行きが出るんだなあと、綺麗な街の風景描写で気付いた。

『アジョシ』つながりでレビューに「似ている」と書かれていたのを読み、即連続で視聴。「似ている」というよりは、コピー元と言っても過言ではないと思った。

ミルクを好んだり、読み書きができない、あとレオンのキャラクターなどは邦画『ファブル』のキャスティングや設定に影響を与えていそうな気もした。

このマセ過ぎて首から上と体格が余りにもミスマッチングな洋画版灰原哀が、かの有名なナタリー・ポートマンであることを衝撃と共に知った。

当時の彼女ならコナンに出てきたとしてもきっと違和感なく演じてくれるだろう。

『アジョシ』との比較でいうと、がっつり年の差ラブロマンスを盛り込んでいたことが洋画らしく、韓国映画の性描写に対して異常に距離をとる文化とは確実に違うところだなと感心。

ラストが完全なるハッピーエンドではないところが、好みの問題で『アジョシ』か『レオン』に分かれるところだろうと思う。

意外と『アジョシ』よりも残虐なグロシーンは少ない(発砲や爆破はあるが、韓国映画お得意の“キムチなみにグッチョングッチョン”みたいなのは無い)ものの、ストーリー展開としてはこちらの方がディープだなと思った。

『アジョシ』が親子や家族の線を濃く描いているのに対し、『レオン』では復讐や恋愛の線が濃かった。

無垢な子供が無垢な侭に(受け子やヤク作りを手伝わされるものの殺し屋の手伝いとまではいかない)助かる『アジョシ』とは違い、『レオン』のマチルダは深く「おじさん」の懐に入り込み、“普通の女の子”ではなくなった。

画づらやストーリー展開のインパクトは、役者勢や撮り方、カットつなぎも含めて完全に『レオン』だが、感情描写の繊細さやアクションの面白さ、“実際にありえそう”感でリアリティがあったのは『アジョシ』だと個人的には思った。

いい意味で『レオン』のワンカットワンカットが、鉄板、王道という言葉がめちゃくちゃ似合う作りだった。


まあ、自身もアジア人だし。13歳の時に50過ぎくらいに見えるおっさんに万が一にも「初恋をした」として、それをそのまま本人に言うかな?笑 というところもあり。

そういう意味では『レオン』の方が「映画映画」していて、喩えるならば『最後まで行く』と『ピースブレーカー』でいうところの『ピースブレーカー』、『ベテラン』と『ビッグショット』でいうところの『ビッグショット』な感じ。

派手なのは『レオン』、繊細なのは『アジョシ』そんな感じがした。

個人的な好みは...『アジョシ』かな。ナタリーポートマンのマチルダには勝てないけれど.. ウォンビンの「一回だけ抱きしめてもいいかい?×2」にも勝てないのであります。照

なんというか、韓国映画はいい意味で恋愛や性描写のみならず、たわいないスキンシップに対しても躊躇がすごい。

たしかに『レオン』の主人公も、マチルダに対してすごくすごく躊躇をしていたが、そもそものマチルダの行動が段階をすっ飛ばし過ぎていて現実味がなかった。

その点『アジョシ』では、薬指にスマイルのネイルを塗ってあげるくらいだったが、くすぐられるような可愛らしさがあったし、すぐには助けられないアジョシの内情も相俟って、距離感が絶妙にリアルだった。

「それでもおじさんを嫌いにはならない。だっておじさんまで嫌いになってしまったら、世界にだれ一人も好きな人がいなくなってしまうから」そう言って自ら去るスミは、マチルダの直接的な「愛してるの」にはないマセ感があった。

こうやって比較するのがとても楽しいから、ネタ元が同じな海外作品リメイクものって好きだ。
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