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28日後...のごはんのレビュー・感想・評価

28日後...(2002年製作の映画)
3.8
 イギリス映画・舞台もイギリス。どこかの病院で、主人公ジムは先日の事故による昏睡常態から目覚める。何日たったのだろう、病室には誰もいない、病院どころか外にも誰もいない。無人のロンドン。「ハロー!」いくら叫んでも誰もいない。そして、ようやく出会ったのは「人ではなくなってしまった」者達・・・

 記憶も定かじゃないくらい昔にながら見して以来、ようやくちゃんと鑑賞。「もうちょっと面白かったイメージだったのに、何から怒っていいのかわからんくらい酷かった。」というのは続編の「28週後」のページに書いた感想だが、こちらは逆で、記憶よりかなり面白かった。

 ゾンビも出てくるし、世紀末ロードムービーでもあるが、これは「ハロー」という言葉を掘り下げてできた映画じゃないか、と思った。低予算で、ハリウッド的なプロダクト臭がなく、まだらながらも途切れなく根を張る内相的な世界観。
 
 アポカリプスが起こってから28日後とはどういうタイミングか、空っぽのロンドンが物語る。混乱がひと段落し、本当に世界が終わったのか否かのグレーゾーンということだろうか。

 少なくとも、ジムの大切な世界の消失は、息をするように序盤で無造作に突きつけられる。ジムが家族を悼むシーンの、ジムがビデオ映像に入りこんでるかのような演出が凄くよかった。映っているのは恋人とかじゃなくて父と母。お祝いとかではなく、なんでもない何気ないやりとり。ハリウッド映画ならワイフや息子とのアニバーサリーでも思い出しそうなところだが、この映画は「アイラブユー」ではなく「ハロー」なのだなと。そしてそれが失われた世界だ、といわんばかりの殺伐展開。
 
 現実を知り、その象徴たるリアリストのセリーナと同行するようになるまでの怒涛の序盤を経て、次に出会う生存者が親子2人というのがほっとするし、少し寂しくていい。親子+他人+他人ってなんか戦闘的ではなくて今後どうなるんだと思ったら本当にロードムービーになってしまう。希望を信じての旅。親子を最初は足手まといとかいってたセリーナが親子のおかげで世界を取り戻していく。

 なんだ、世界はまだ大丈夫じゃないかと思えた頃、ジムが見る悪い夢、「ハロー」の届かない世界。それはこの先の暗示だろうか。

 後半、これまでとは少し違う意味で「ハロー」が届かない連中が登場する。こいつらの欲しがる未来は、世界が終わったと思い込んだネガティブな思考回路によるもの(なんでこんなに希望無くしてんだろう?島国だから??)。そこにあるのは薄皮一枚の文明もどき。ジムは物静かだが、彼らと対比すると根がポジティブなのがわかる。少なくともジムにとっては、「ハロー」の届く相手がいる限り世界は終わらない。
 
 気になった点もいうと、序盤の状況は嘘っぽい。アバンは適当だし、ジムがあの状況になるのもかなり奇跡的だろう。ベース作りは無理くり感がある。あと、どの時間帯が安全で、どういう行動がベストなのか微妙に固まってなくて登場人物のサバイバルのもっさり感にもやもやする。とはいえ大きく気になったのはその2点くらい。

 日本語の細かく分けられたニュアンスが生む奥行きもあれば、英語の広いニュアンス生む奥行きもあるよなあとまあ思つた。「こんにちは」じゃ無理だこれは。


 余談

 キリアン・マーフィーを始めて見たのがこの作品だったが、競演の女性がナオミ・ハリスだったことを再見で知っておおっとなった。
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