キャサリン子

海を飛ぶ夢のキャサリン子のレビュー・感想・評価

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
4.0
ノルウェー船の船員として世界を巡っていた19歳のラモンは、浅瀬に飛び込んだ際に海底に激突して四肢麻痺となってしまう。
以来、26年間寝たきり生活をよぎなくされるが、尊厳死の支援団体の助けを借りて『死ぬ権利』を認めてもらうための裁判を起こすことを決意する……というお話。


ひでちゃんが絶賛してたやつ☆
すごく良かった。観てよかったと心の底から言えます。
ところで、ポスター画に「世界中が泣いた。魂を揺さぶる真実のラブ・ストーリー」などと書いてあるけれど、これラブ・ストーリーなの?
愛する人が死を望んだら、果たしてその意志を受け入れ尊重できるかどうか?という問題提起でもあるので、そういった意味ではラブ・ストーリーか🤔
ラブ要素もあるけれど、あくまでもテーマは『尊厳死』です。
『死』がテーマと言っても決して暗い映画では無く、むしろ明るくて爽やか。
映像も音楽も、とても美しかった。
観終わったあとは、悲しいというよりも心が温かく清々しい余韻が残りました。
先日観た「さがす」も尊厳死を扱っていたけれど、これ観たあとだとあちらはショボく感じる。
「さがす」は、誰にも感情移入できなかったので、どこか他人事のような感じで観ていたのですが、本作は主役のラモンをはじめ、家族や友人など、自分を愛してくれている人の心の機微もわかりやすく丁寧に描かれており、誰に対しても非常に感情移入しやすかったです。


ところで、ラモンは果たして本当に一度も「死ぬこと」への決心が揺らぐことは無かったのでしょうか。
愛する人ができ、その女性もまた難病で治癒の見込みはなく、人生に絶望しており死を望んでいると知ってもなお、気持ちがグラつく瞬間は無かったのかな。

愛し愛してくれる女性と、共に生きていくという選択肢が彼には一切無かったということが、非常に切なく哀しい気持ちになりました。
「僕は、愛すことができない」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられました。


この作品がキッカケで、スペインでは尊厳死や自殺幇助が合法化されたとのこと。
社会的に大きな影響を及ぼした本作、オススメです!
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