ふじこ

海を飛ぶ夢のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

25歳の時に海の事故で首から下が動かなくなってしまったラモン。
それから26年寝た切りになってしまい、兄の妻に面倒を看てもらいながら兄とその息子、そして老いた父と同居している。
そして遂に尊厳死を求めて尊厳死を支援する団体や自らも脳出血性認知症を患う女性弁護士と一緒に法定で戦うも、認めてもらえず。
それに関連して出演したテレビでのインタビューを見た子持ちでシングルマザーの女性や友人の手を借りて、死ぬ事にする。
そしてその後、すっかり症状が進行してラモンの事も忘れてしまった弁護士の女性の所に最後にラモンの書いた詩が届き、美しい景色を飛びながら眺めるように映って終わり。

想像の中でなら何処へでも行ける、っていう劇中の話からのエンディングなのだけれど、どちらも映像がとても美しかった。トゥーランドットの誰も寝てはならぬをバックに、動かない体を起こし窓から飛び立ち、丘を越えて海へ。
"どんな鳥だって、想像力より高く飛ぶことはできないだろう"とかつて寺山修司の本で読んだけれど、本当にそうだと思う。人の能力でこれ以上に素晴らしいものもないのではないかと思う。
けれども、ラモンはもう死んでしまいたかったんだな、とも想像出来て胸が痛くなるシーン。

そして弁護士であるフリアと確かに一時分かり合えたはずなのに、彼女は症状が進みラモンの自死を手伝う事が出来ず、更に進行して彼を忘れてしまう。
そんな彼女に宛てた最後の詩も物凄く切なくて、でも美しくてたまらなかったなあ。

ただ唯一、最後にラモンと一緒にいるシングルマザーで仕事も首になって結構どん底のロサをどう捉えて良いのか分からなかったな~。
最初は突然やってきて、救いたい!お世話したい!みたいになっていたけれど、いや死にたいんだって、いらないよって言われてからも定期的にやってきて、仕事も首になったし、急に愛…!愛してる とか言い出してラモンの自死に手を貸すんだけど。一番愛さなきゃならないのは自分の子供達だし、上手くいかなかったとしても生きるために仕事を探すべきでは?とか思ってた。言ってしまえば、ラモンに構っている暇はないのではないかと。
なんだか自分では動くことの出来ないけれど確固とした意志があって、しっかりとした自分があるラモンに依存しているような…傷ついて沈み込んでしまった自分という存在をラモンに依存する事によって得ているような。
そんな気がして、この女性大丈夫なのかなぁって思ってた。
それから、兄は大反対して、父も悲しんでいるけれど、他人であるはずの兄の妻や甥っ子なんかの方がラモンを理解してくれていて、そんな家族がラモンを失ってからどうなるのかなぁとか。
いつかもう一回再視聴したいなあ。


以前から観たかった一本、観て良かったなあ。
わたしも尊厳死という選択はあった方がいいと思っているし、なんなら何時かその時がきたらわたしもそうしたいと思う。
"尊厳"という言葉で誤魔化すなって台詞があったと思うけど、例えば日本中に溢れる自殺であっても"選択した自らの死"で、尊厳死もまた自死と同じなのはそうだと思う。
だから別にそれは自殺だと言われても そうね、って思うんだけれど、そんな言葉遊びみたいなもので死ぬ権利を阻害されるのは違うんじゃないかなあって。
実際に命を与えてくれたのは両親だけれど、神が~~とか、それも別にいい。好きなものを好きなように信じれば良い。
生きる権利、人間としての権利を尊重するのであれば、死ぬ権利だってあっていいと言うか、尊重してほしい。
神とかそれを信じる気持ちとか、そういうのを振り翳して生きさせようとするけれど、実際に生きるのはそんな事言ってる人じゃない、死にたい人なのに。代わりに寝た切りになる訳じゃないのに。
無理矢理生き続けさせる事って、命を尊ぶ事になるんだろうか。毎日死にたい死にたいと思って生きる人生なら、神を持ち出すならそれこそ"神の御許"に行きてぇなって思っても仕方ないと思うんだけど、それすら自殺は神のところには行けないので!って言うんだろうなあ。
ふじこ

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