梅田

祇園の姉妹の梅田のレビュー・感想・評価

祇園の姉妹(1936年製作の映画)
3.7
義理人情に厚い姉とシニカルで現実主義的な妹の芸妓姉妹の受難を描いた映画。この36年のフィルムに通底する徹底的なリアリズムと社会への批評的な視線は、50年代前半の名作群に至るまで全くブレがない。さすがの溝口節に舌を巻きます。
ただ、人間というものへのかすかな信頼を具現化した一筋の救いをみせ、物語に「綺麗な締め」がもたらされる後年の作品と比べると、この映画は極めて「尖って」います。言い換えれば、この映画にはただただ怒りだけがある。70分にも満たない短い作品だけど、切れ味抜群。
冒頭の平行移動するカメラはまるでウェス・アンダーソンだったり、日本の長屋の構造もあってかけっこう撮影もおもしろい。なんとかもっとクリアな映像と音声で見られないものか……。

2015年の映画はこれでラスト。今年Markしたのは計329作。来年もたくさん見ていきたいです。
梅田

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