京都・祇園の芸者姉妹の物語。
馴染みの男に尽くす姉梅吉と、勝ち気な妹おもちゃ。姉のために、次々と男たちを籠絡するおもちゃだが、いつしか恨みも買ってしまう。
物語は京都祇園の町。威勢の良い男たちの声が響き渡る中、家の中にタンスやら襖やら家具が無造作に置かれている。そこから絵巻物を開いていくかのような、カメラの横移動が進んでいくと、倒産した木綿問屋の古沢の家財道具が、競売にかけられている騒がしい様子が垣間見える。監督の特徴であるこの長回しが初っ端から吸い込まれるように溝口ワールドが見せつけられる。
この家の主人であった、倒産した木綿問屋の古沢は、姉梅吉の元旦那。すがるように姉妹の住まいに転がり込む古沢に同情し、世話する姉の梅吉と、それを良しと思わぬ妹おもちゃが主人公。
対照的な性格の姉妹の姿がとても興味深い。おもちゃが京都弁で膨大な台詞量をつらつらと、髪を梳かしながら、化粧をしながら、飲み物を飲みながらの動作と共に部屋を大きく動き回る姿に目を奪われる。この一連のシーンでおもちゃ演じる、当時19歳の山田五十鈴のお芝居がとにかく圧巻である。
封切り時、芸妓商売の描き方に祇園を騒がせたとも言われ、尽くしても上手く世渡りしても後で泣き寝入りする女の悲劇に、当時の女性差別の主張、日本のリアルな女性像に迫った作品と称されている。
検閲により90分以上あった完全版から現在残るのは69分。台詞が聞き取りづらいというのが難点だが、愚かさ、したたかさを全て詰め込んで女という生き物を描いた溝口監督の眼差しには、現在に通ずる溝口監督の主張があると感じさせる。