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潜水服は蝶の夢を見るのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)
3.7
たまにこういう作品に出会うと小さい頃から、本当かもっと読んどけばよかったなと思います。
正直に言ってこの作品の美しさを監督が望んだ程度に感じることはできなかったと思います。それは、単純に英語力がないのもそうですが、言葉から連想できるイメージの引き出しが好きなすぎる。しかし、自分の感受性のどこかで、涙が出るほど美しいと感じたのは事実です。それだけ、この作品には映画としての美しさが詰まっています。

実際の小説を題材とした映画の脚本というのは多くあります。言葉という限られた種類の記号で箱詰めされた美しい映像を読者が自分の経験や感性を使い、映像へと書き直して行くのが文学作品だとしたら、映画はどのような役割があるのでしょうか。
一概に他のストーリーテリングの媒体と比較することはできませんが、映画には必ず制作側の視点を通しているという違いがあります。有限の型枠にはめ込まれた言語なだけに、その中身には無限の解釈を含んでいるのが言葉でしょう。一方、映像が視界に広がることで、より明確な情報が視覚から入ってくることで、より導かれた感情を受け取れるものです。小説の手軽さ、想像の無限さはなくてはならないものですが、映画は制作側の視点が一枚挟まっていることから、さらに深く、またsらに視聴者の個人の部分に浸透して行くものではないでしょうか。

この作品にして観ても、主人公のジーンの視点で物語がスタートし、一瞬にして視聴者は主人公にダビングしたような形でストーリーが進んでいきます。中盤からガラッとリズムが変わり、主観の位置が少し主人公ジーンから離れ、他のキャラクターの感情が、ジーンの感情に及ぼす影響をある程度、客観的に同情できます。そして、この作品のメインである叙述的な表現でジーンが現在を過去と比較するシーンで、視聴者はジーンの視点へと必然的に陥り、”The Diving Bell and the Butterfly”を迎えます。その叙述的な表現がそれまでに語られた人々との関係をなぞり、後悔、愛情などの人間性が彩られて行くのですが、そこには視聴者にお任せ。より個人的な想いへと潜っていいクルートに乗っているので、あとは自然に涙が溢れるのを待つだけ。

もっとこの作品からたくさんのものを感じ、より深くに潜ってみたい。
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