odyss

小さな恋のメロディのodyssのレビュー・感想・評価

小さな恋のメロディ(1971年製作の映画)
3.0
BSにて。
遠い昔、どこかの名画座で見たのが最初。
ロードショウではなく、それから何年もたってからです。
その後、一度TVで見た記憶がありますが、今回は久しぶり。
内容はすっかり忘れていました。

この映画、主演のマーク・レスター少年が可愛いというので女性受けして日本では大ヒットしたのですが、英米ではあまり客が入らなかったそう。

なぜかは今からすると歴然としています。
これは体制に叛逆する若者の話。
つまり、この映画が作られたのは1971年で、1960年代後半の先進国における「叛逆の季節」の延長線上で構想された映画なんです。

でも、何しろ主役のふたりは10歳という設定。
恋が何なのか、結婚が何なのか、本当には分かっていません。

ユーミンが作って大ヒットした歌「いちご白書をもう一度」は映画『いちご白書』がもとになっていますが、これは実際にアメリカの名門大学で起こった学園紛争を素材にした映画です。でも日本では映画はヒットしなかった。
なぜか。当時は日本でも大学紛争が起こっていましたが、そのために若者は逆に、紛争を客観的に見ている(つまり単に反体制的な若者の視点から作ったのではない)映画にはあまり共感できなかったからでしょう。

この『小さな恋のメロディ』では教師や両親など大人の俗物性や形式主義が叩かれていますが、大学生か高校生ならともかく、10歳の子供が叛逆の主体なので、英米ではあまりリアリスティックには受けとめられなかったのではないかと想像します。

しかし日本では、「マーク・レスター少年が可愛い」「英国の街並がエキゾチック」というので受けた。十歳同士の恋愛にリアリティがなくても、異国の話なのであまり気にならなかったわけです。

細かく見るなら、メロディちゃんは労働者階級の両親を持っているのに対し(父が日中からパブで飲んだくれている)、ダニエルくん(マーク・レスター)は母が(あまり高級そうではありませんが)クルマで学校に迎えにきているわけで、父は会計士だから、中産階級なのです。
英国ではそういう階級の差が大事で、この映画でも「階級を超えた愛」が描かれているわけですが、当時の日本人にはその辺の細部は分からなかったんじゃないかな。

作中で使われているビージーズの歌がヒットしたことも相乗効果だったのかも知れませんね。
odyss

odyss