ぷかしりまる

憎しみのぷかしりまるのネタバレレビュー・内容・結末

憎しみ(1995年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

画面もセリフもめちゃくちゃイケてる
フレンチポップとか聴いてて薄々感じてたけど、フランス語の発音が好きだ。単にブチ切れて話してるのにリエゾンや破裂音の響きが美しくて音楽みたいだ。
音楽に関して冒頭のレゲエ、ヒップホップなど(抵抗を歌う?)サントラがイカす。だってボブマーリーから始まるんだよ!アップテンポな曲と対比された内心の空疎や憎しみを感じる。

好きなセリフ
・友だちの家に起こしに来てキス、「何すんだよ」「目覚めの挨拶は平手打ちよりもキスがいいだろ?」「うっせえ、つーかお前の息臭ぇよ」
・屋上で勝手に祭りを開催して追い出され、カバの滑り台がある公園に行くと、メディアから若者の暴動についてインタビューされ「何撮ってんだ?ここはサファリパークじゃねぇぞ!」キレッキレで爆笑した
・友だちにバリカンで髪を切ってもらう「ねぇ大丈夫!?なんか後頭部が冷たいんだけど!?」「うん大丈夫ほら」(鏡チラ見せ)「見せる気ねえだろ!?」場面が代わりニット帽を被った主人公とそれを説得する主人公、「大丈夫、ニューヨークじゃこれが流行ってんだよ!」「てめえ!!」(丸ハゲみたいな跡がついてる)
・「なあ、俺の金が戻ったらみんなにココアを奢るぜ」
・メトロ内でのカンパ、「うるせぇ何がお恵みだ、俺だって家族全員ムショにいるんだ。働けよ!貧しいんなら」
・「でも1番強いのはこのキャラだよ!」「もういいさ、お前はいつも決めつける」
・「くっさ!誰の屁だ?」「「こいつだ」」
・「俺が合図をしてエッフェル塔の明かりを消してやる」「何言ってんだ、映画じゃあるまいし」←主人公たちが去ってから明かりが消える(好き)

好きな場面
・高級な芸術作品にケチをつける主人公たち、ナンパがきっかけで騒ぎを起こし、Excuse-moi と言いながらグラスをぶち壊し退場
・主人公たちが喧嘩している途中にトイレから出てきて、強制収容所時代のうんこの話をするすっとぼけ爺
・インターホンカメラ越しにケチをつける主人公たちの姿が映る(テレビ越しとかそういう演出が多かった)
・急なヌンチャク遊び わ〜い

主題にある権力
デモ中に偶然拳銃を拾い、デモ活動の取り調べの結果死んだ友人の無念を晴らそうとするゴロツキ。しかし警察を一人殺しても何にもならない(憎しみは憎しみを生むだけである)ことを分かっている。印象に残ったのはパリにて主人公の2人が拘束され、リンチを受ける場面。「人間の個人の自由は国家の自由によってのみ実現される。我々は国家から逃れられず、国家に仕えることで自由になれるが、国家によって自由が抑圧されうる」と述べたのはシュクラーだ。シュクラーは国家が権力によって個人の身体に介入することについても述べていたが、この映画のワンシーンにそれがよく現れていたと思う。

権力に抵抗するアナキズム
冒頭のデモ然り、主人公たちの姿を通して権力に対するアナキズムが描かれている。例えば団地の屋上で勝手に祭(一言言っておくと、ぷは楽しいことを全て祭と呼んでいます!)を開催して人が流動的ごちゃごちゃ集まって自由に帰ったりする。知らない人と話したり踊ったりご飯食べたりして、無秩序が自然発生する。まさにアナキズムだと思う。(『ロビンソンの庭』に似たような場面があります)すると秩序、権力としての警察が介入し、祭を止めるよう言われる。ブレイディみかこの本?(確か)にあった、お金のない若い人たちが流動的に空き家に無償で住んだり管理する取り組みの話を思い出す

この映画を観る前にタクシードライバーを観た。トラビスが躊躇なく引き金を引く姿(生きてることの実感のなさ)に虚しい気持ちになったが、この映画ではたとえどん底にあり、どんなに妄想の中でぶっぱなす妄想をしたり、フリはしているのに、引き金を引くことに躊躇し葛藤する姿がよかった。

雑感
これ見終わった後、中庭に出たら日差しがあたたかく気持ちよくて、テーブルに突っ伏して寝てた。春が来た。この心地よさはワンルームの日がささない部屋じゃわからない