Omizu

憎しみのOmizuのレビュー・感想・評価

憎しみ(1995年製作の映画)
4.0
【第48回カンヌ映画祭 監督賞】
マチュー・カソヴィッツ監督作品。ヴァンサン・カッセルのブレイク作としても有名で、セザール賞作品賞、ヨーロッパ映画賞新人賞などを受賞した。

観たかったけど配信にもレンタルにもなかなかないし、ソフトも廃盤で高騰していたので手が出せず。WOWOWさんありがとう。

ユダヤ人のヴィンスが暴動のどさくさに紛れて警察の銃を拾ったことに端を発し、仲間のアラブ系のサイード、アフリカ系のユベールを巻き込んだ騒動に発展する。

カメラワークが非常に独特で面白く、ヒップホップ音楽やブレイクダンスなど若者カルチャーを取り込み鮮烈な演出でみせている。

ラジュ・リの『レ・ミゼラブル』で本作がよく比較対象にされていたが、確かに通じるところが多い。貧民地区での若者の暴走と警察襲撃。若者目線の本作を警察目線に逆転したのが『レ・ミゼラブル』だ。

主要三人はいずれも移民系であり、それもひとつの大きなテーマ。アフリカ系のユベールとアラブ系のサイードの一目で分かる移民である二人と、ぱっと見では分からないユダヤ人のヴィンスでは異なることも描かれる。二人は捕まってもヴィンスは見逃されることが多い。

三人でつるんではるが、世間を理解しようとしないヴィンスとその境遇ゆえか一歩引いた大人目線のユベールでは見えている世界が違う。

せっかくユベールは大人になろうとしているのに悲劇が起きてしまう。それをみていることしかできないサイード。ラストは彼の悲痛なショット。

フレッシュな演出で移民国家としてのフランスを鮮烈に描いた名作。
Omizu

Omizu