まぬままおま

あるじのまぬままおまのレビュー・感想・評価

あるじ(1925年製作の映画)
4.0
カール・ドライヤー監督作品。

原題は『Du skal ære din hustru』、邦訳すると『汝妻を敬うべし』。
教訓劇というものがあるらしく、本作はその形式だ。
なんともジェンダーステレオタイプな教訓ではあるが、暴君のあるじ・ヴィクトルが妻・イダに逃亡され、メイドのマッスに家事労働をおしつけられ失墜する様は何とも皮肉がきいているし笑える。もうマッスの方が「あるじ」なのだが、ヴィクトルが改心する展開の軽やかさはみてて爽快。

ドライヤー作品が私に嵌まらない原因は何なのか、分からないままだったけれどパンフレットvol.2掲載の三宅唱監督の「赤子のように」を読んで一因が分かった。彼らが普通に存在してて、普通に動いているんですよね。作劇がないかのように。クロース・アップといったカメラの動きもあるけれど、その不思議さがまるで普通かのように。

本作の彼らは普通に家庭生活を営んでいる。彼らは動いているから、アクションの連鎖は起こる。だがそれは物語ろうと動いているわけではない。けれど自ずと物語が生まれてしまっている。その普通さが巧みな演出で普通ではないところから導かれ、カメラで撮られている。その凄さに気づかなかったから、ドライヤー作品に嵌まれなかったのではないかと今は考えている。

まだまだ全然分かってないからドライヤー作品リベンジしたい。『ミカエル』特集上映でみたかったな…後悔。